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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
屋敷から歩いて五分ほどの厩舎に着くと、鷹司は暁人に大人しい小柄な駿馬を与えた。
「アルブレヒトは扱い易いアラブ種だ。君なら乗りこなせるだろう」
暁人は馬術部の新入生の中でも目立つ精鋭な生徒だ。

「…僕は…?」
薫は初めての馬に乗るのは苦手だ。
馬術部の部活もサボりがちで、入学してからまだ数えるほどしか参加していない。
…そのことも光を怒らせる原因なのだが…。
上質な乗馬服に身を纏った鷹司は颯爽と先に鞍に跨ると、軽々と薫を片手で抱き上げ、自分の前に乗せた。
「わっ…!」
「君は僕と一緒だ。お姫様」
背中から細身だが引き締まった腕で抱きしめられる。
暁人の貌が強張った。

女の子のような扱いをされた薫はむっとしながら、鷹司を睨んだ。
「ちょっと…!」
鷹司は少しも動じずににやりと笑った。
「僕がしっかり抱いているから怖くないよ。…落馬するよりいいだろう?跳ねっ返りのお姫様」
薫のさらさらの美しい髪にキスをする。
「先輩!」
薫はくすぐったそうに身を捩る。

暁人が怒りを押し殺した眼差しで鷹司を睨んだ。
鷹司は益々愉しげに笑い、暁人にウィンクする。
そして鐙を軽く蹴ると、鮮やかに馬を操り駆け出した。
「さあ、付いておいで。…君たちを僕の秘密の隠れ家に案内しよう。…とっておきの…ね」
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