この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
二頭の馬は早駆けに近い速さで、別荘から続く林の道を駆け抜けた。
暁人が気になる薫は度々後ろを振り返った。
いくら暁人が乗馬が巧みとはいえ、初めての馬、初めての山道だ。
しかも道はどんどん狭くなり、山と山を渡す細い吊り橋を渡ってゆく。
それらすべての山々も鷹司家の領地だという。
噂に違わぬ富裕ぶりだ。
さすがに鷹司は馬場を走るように軽やかに駆け抜ける。
だが薫は、暁人の馬の脚が渡り木の隙間に取られたらどうしようと、気が気ではない。
暁人は硬い表情のまま、しかし不安げな色は一切見せずに手綱を握りしめ馬を操っていた。
少し安心して薫は前を向く。
「心配?」
可笑しそうに耳元で尋ねる鷹司に、つっけんどんに答える。
「当たり前でしょう。暁人は幼なじみですよ。怪我でもしたら…」
へえ…と、鷹司は意外そうに眼を見張る。
「君は大紋には冷たいと思ったんだけど…そうでもないんだね」
「僕のことを何だと思っているんですか⁈」
むっとして見上げると、鷹司は形の良い唇に薄い笑みを浮かべ、眼を細めた。
「…君は天性の小悪魔だな…」
そうして馬に鞭をくれると、目の前に深々と広がる森の奥へと分け入って行くのだった。
暁人が気になる薫は度々後ろを振り返った。
いくら暁人が乗馬が巧みとはいえ、初めての馬、初めての山道だ。
しかも道はどんどん狭くなり、山と山を渡す細い吊り橋を渡ってゆく。
それらすべての山々も鷹司家の領地だという。
噂に違わぬ富裕ぶりだ。
さすがに鷹司は馬場を走るように軽やかに駆け抜ける。
だが薫は、暁人の馬の脚が渡り木の隙間に取られたらどうしようと、気が気ではない。
暁人は硬い表情のまま、しかし不安げな色は一切見せずに手綱を握りしめ馬を操っていた。
少し安心して薫は前を向く。
「心配?」
可笑しそうに耳元で尋ねる鷹司に、つっけんどんに答える。
「当たり前でしょう。暁人は幼なじみですよ。怪我でもしたら…」
へえ…と、鷹司は意外そうに眼を見張る。
「君は大紋には冷たいと思ったんだけど…そうでもないんだね」
「僕のことを何だと思っているんですか⁈」
むっとして見上げると、鷹司は形の良い唇に薄い笑みを浮かべ、眼を細めた。
「…君は天性の小悪魔だな…」
そうして馬に鞭をくれると、目の前に深々と広がる森の奥へと分け入って行くのだった。