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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
二頭の馬は早駆けに近い速さで、別荘から続く林の道を駆け抜けた。
暁人が気になる薫は度々後ろを振り返った。
いくら暁人が乗馬が巧みとはいえ、初めての馬、初めての山道だ。
しかも道はどんどん狭くなり、山と山を渡す細い吊り橋を渡ってゆく。
それらすべての山々も鷹司家の領地だという。
噂に違わぬ富裕ぶりだ。

さすがに鷹司は馬場を走るように軽やかに駆け抜ける。
だが薫は、暁人の馬の脚が渡り木の隙間に取られたらどうしようと、気が気ではない。
暁人は硬い表情のまま、しかし不安げな色は一切見せずに手綱を握りしめ馬を操っていた。

少し安心して薫は前を向く。
「心配?」
可笑しそうに耳元で尋ねる鷹司に、つっけんどんに答える。
「当たり前でしょう。暁人は幼なじみですよ。怪我でもしたら…」
へえ…と、鷹司は意外そうに眼を見張る。
「君は大紋には冷たいと思ったんだけど…そうでもないんだね」
「僕のことを何だと思っているんですか⁈」
むっとして見上げると、鷹司は形の良い唇に薄い笑みを浮かべ、眼を細めた。
「…君は天性の小悪魔だな…」
そうして馬に鞭をくれると、目の前に深々と広がる森の奥へと分け入って行くのだった。
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