この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「…僕は彼を愛してなんかいない。彼はまだ子どもだった僕を無理やりに近い形で抱いた酷い男だ。…それに…彼もまた僕を愛してはいない。…彼は僕の母を憎んでいた。彼の父を誑かし、子どもが出来た途端に別荘から追い払った冷たく淫乱な母を…。…そして性懲りも無く自分を誘惑し、関係を持った母を…。激しく憎んでいたから復讐の為に僕を抱いたんだ。…いや、彼は僕も憎んでいるのかも知れない…。そんな男をどうして愛せるんだ?」
鷹司の眼はもう笑ってはいなかった。
暗い暗い夜の海のような孤独な色を湛えていた。

怯むかと思った暁人は負けずに言い返した。
普段、物静かで目上の人には決して逆らわない暁人にはあり得ない行動だった。
「…でも、貴方が彼を語る口調はまるで恋しい人を思う口調だから…」

鷹司の切れ長の美しい瞳が怒りに燃えた。
手にしたワイングラスが床に叩きつけられる。
「黙れ!黙れ黙れ!君に何が分かる⁉︎ぬくぬくと両親の愛を受け、呑気に育った君なんかに…いきなり身体と心を奪われたこともない君に!何が分かるんだ!」
鷹司の態度がいきなり豹変した。
そこには学院の執行部のメンバーの一人…選ばれた者のみが着ることを許された紫のベストを着たいつも冷静で、穏やかで、驚くほどに老成した端正な鷹司の姿は何処にもなかった。
…ただ、生のままの彼…憎悪も苛立ちも鬱屈も…そして哀しみも…全てを曝け出した17歳のそのままの彼が存在していた。

薫はこんなにも裸の鷹司を…いや、裸のままの人間の叫びを聞いたことはなかった。
心臓が鷲掴みにされるほど痛む。
何かを言わなくては…と必死で頭の中で言葉を探すが唇から発せられたのは弱々しい吐息のみだった。

だが暁人は違った。
人が変わったように攻撃的になった鷹司を瞬きもせずに見据え、言い放った。
「自分ばかり傷ついて可哀想みたいに悲劇のヒロインになるのは止めて貰えませんか?…貴方だって僕のことを知りもしないのに!…僕の両親のこと?全て知っているのですか?…一見理想的な家庭に見えても、実は色んな問題を抱えていることだってある。僕が呑気⁉︎
は!…僕は今、大好きな人が違う人に恋をしていて…でも何もできない…そんな自分に絶望しているんです!そりゃ貴方の悩みに比べたら小さいかも知れないけれど…!」
「…暁人…お前…」
紅潮しながらも強張る暁人の横顔を薫は見つめる。


/954ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ