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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
屋敷から厩舎に向かうだけでも、大粒の雨に打たれ、薫はすっかりびしょ濡れになってしまった。
厩舎に飛び込むと、暁人は既に馬に鞍を付け、出発の準備を進めていた。
ランプの灯りに照らされた暁人の横顔は硬く…しかし驚くほどに冷静であった。
「暁人!」
薫は黙々と馬に馬具を付ける暁人の傍らに駆け寄る。
「やめろよ、こんな嵐の夜に…。暁人、暗闇苦手じゃないか!無茶だよ!」
暁人の腕を揺さぶる薫を静かに見る。
小さな馬用のランプを取り付け、厩舎の壁にかかっていた雨具を無造作に着る。
「…無茶でもやる」
「何でだよ⁉︎」
暁人がやっと手を止め、薫を真正面から見つめる。
そして瞬きもせずに低く答えた。
「僕がどんなに薫を好きか、証明したいから」
「…そんな…」
思いもかけない暁人の言葉に動揺し、絶句する。
そんな薫をふっと柔らかな表情をして慰めるように囁く。
「いいよ、薫が僕を好きじゃないのは知ってる」
「…暁人…」
「好きじゃなくてもいいよ。僕は薫が好きだから。…これは僕のプライドだ。だから気にしないで」
にっこり笑うと、軽やかに馬に跨る。
「よせってば!昼間見ただろう?あの吊り橋!古びててさ。あの吊り橋から落ちたらどうするんだよ⁉︎」
薫は鐙に掛けた暁人の足にしがみつく。
…暁人が好きかどうか、分からない。
だけど、暁人を行かせたくない。
暁人が死んでしまったら…と考えたら背筋が震えるような恐怖を感じる。
暁人は必死な表情の薫を意外そうに見下ろし、とても嬉しそうに笑った。
「ありがとう、薫。…君がそんなに僕の心配をしてくれるなんて、思ってもみなかった…」
「馬鹿馬鹿!当たり前だろう⁉︎」
暁人はまるでちょっとそこまで外遊に出かけるかのような落ち着いた貌で告げる。
「薫は屋敷に戻って。鷹司さんだってさすがに賭けをしている時に不埒なことはしないだろう」
「暁人!」
暁人は巧みな手綱捌きを見せながら、厩舎を出る。
そして、振り向きざまに
「…薫…。…愛しているよ…」
そう少し恥ずかしそうな笑顔で告げると漆黒の闇の中、恐ろしいほど嵐の吹き荒ぶ風雨に吹かれて馬を駆けていったのだった。
厩舎に飛び込むと、暁人は既に馬に鞍を付け、出発の準備を進めていた。
ランプの灯りに照らされた暁人の横顔は硬く…しかし驚くほどに冷静であった。
「暁人!」
薫は黙々と馬に馬具を付ける暁人の傍らに駆け寄る。
「やめろよ、こんな嵐の夜に…。暁人、暗闇苦手じゃないか!無茶だよ!」
暁人の腕を揺さぶる薫を静かに見る。
小さな馬用のランプを取り付け、厩舎の壁にかかっていた雨具を無造作に着る。
「…無茶でもやる」
「何でだよ⁉︎」
暁人がやっと手を止め、薫を真正面から見つめる。
そして瞬きもせずに低く答えた。
「僕がどんなに薫を好きか、証明したいから」
「…そんな…」
思いもかけない暁人の言葉に動揺し、絶句する。
そんな薫をふっと柔らかな表情をして慰めるように囁く。
「いいよ、薫が僕を好きじゃないのは知ってる」
「…暁人…」
「好きじゃなくてもいいよ。僕は薫が好きだから。…これは僕のプライドだ。だから気にしないで」
にっこり笑うと、軽やかに馬に跨る。
「よせってば!昼間見ただろう?あの吊り橋!古びててさ。あの吊り橋から落ちたらどうするんだよ⁉︎」
薫は鐙に掛けた暁人の足にしがみつく。
…暁人が好きかどうか、分からない。
だけど、暁人を行かせたくない。
暁人が死んでしまったら…と考えたら背筋が震えるような恐怖を感じる。
暁人は必死な表情の薫を意外そうに見下ろし、とても嬉しそうに笑った。
「ありがとう、薫。…君がそんなに僕の心配をしてくれるなんて、思ってもみなかった…」
「馬鹿馬鹿!当たり前だろう⁉︎」
暁人はまるでちょっとそこまで外遊に出かけるかのような落ち着いた貌で告げる。
「薫は屋敷に戻って。鷹司さんだってさすがに賭けをしている時に不埒なことはしないだろう」
「暁人!」
暁人は巧みな手綱捌きを見せながら、厩舎を出る。
そして、振り向きざまに
「…薫…。…愛しているよ…」
そう少し恥ずかしそうな笑顔で告げると漆黒の闇の中、恐ろしいほど嵐の吹き荒ぶ風雨に吹かれて馬を駆けていったのだった。