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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「暁人!暁人ってば!」
薫はもう何も見えなくなった暗闇に向かい、怒鳴る。
女の悲鳴のような風の音と霰のような大粒の雨の音しかしない闇に一人取り残される。
…薫…。愛しているよ。…
暁人の言葉が胸に蘇り、ずきりと痛む。
「…馬鹿…馬鹿…暁人の馬鹿っ‼︎」
思い切り叫ぶと、くるりと厩舎の中に戻る。
ドスドスと足を踏み鳴らしながら、馬房の中の馬を睨みつけるように物色する。
栗毛の大人しそうな馬と目が合うと、たどたどしく鞍を付ける。
…今までは暁人が全て手伝ってくれたのだ。
暁人は嫌な顔ひとつせずに薫の世話をいつも焼いてくれた…。
「暁人の馬鹿!」
口をへの字に曲げながらなんとか鞍を付け、馬具を装備する。
轡を引き、厩舎の入り口まで出る。
苦労しながら馬によじ登り、馬の耳元に
「…いいか?急いで暁人の跡を追うんだ。途中で迷ったり僕を振り落としてみろ。…馬刺しにしてやるからな!」
とドスが効いた声で脅す。
薫は鐙を軽く蹴る。
馬は甲高い声で嘶くと、薫を乗せて益々激しくなった嵐の森の中へと分け入っていった。
薫はもう何も見えなくなった暗闇に向かい、怒鳴る。
女の悲鳴のような風の音と霰のような大粒の雨の音しかしない闇に一人取り残される。
…薫…。愛しているよ。…
暁人の言葉が胸に蘇り、ずきりと痛む。
「…馬鹿…馬鹿…暁人の馬鹿っ‼︎」
思い切り叫ぶと、くるりと厩舎の中に戻る。
ドスドスと足を踏み鳴らしながら、馬房の中の馬を睨みつけるように物色する。
栗毛の大人しそうな馬と目が合うと、たどたどしく鞍を付ける。
…今までは暁人が全て手伝ってくれたのだ。
暁人は嫌な顔ひとつせずに薫の世話をいつも焼いてくれた…。
「暁人の馬鹿!」
口をへの字に曲げながらなんとか鞍を付け、馬具を装備する。
轡を引き、厩舎の入り口まで出る。
苦労しながら馬によじ登り、馬の耳元に
「…いいか?急いで暁人の跡を追うんだ。途中で迷ったり僕を振り落としてみろ。…馬刺しにしてやるからな!」
とドスが効いた声で脅す。
薫は鐙を軽く蹴る。
馬は甲高い声で嘶くと、薫を乗せて益々激しくなった嵐の森の中へと分け入っていった。