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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
…遠くで微かな声が聴こえたような気がした…。
暁人は必死に走らせていた馬の手綱を一瞬緩める。
…薫…の声…?
まさか…。
薫は乗馬が大嫌いだし、濡れるのも大嫌いだ。
それから本当は自分よりもっと暗闇が嫌いなのだ。
今でも寝る時はランプの灯りがないと眠れないくらいに…。
…だから、そんな薫が自分を追いかけて来るわけがない。
ふっと寂しく笑いながら、再び森の奥に向って馬を走らせようとしたその時だ。
「暁人!待ってよ!」
土砂降りの雨の中、甲高い薫の声が背後からはっきりと聞こえてきたのだ。
「薫⁈」
暗闇に目を凝らす。
派手な水音と共に、いきなり馬に跨った薫が現れた。
「待てって言ってるだろ!暁人の馬鹿!」
ずぶ濡れの濡れ鼠になりながら、薫は暁人の前に立ち止まり、怒りながら詰め寄る。
「お前が行くなら僕も行く!」
「…薫…」
「…誤解するな。お前があの吊り橋から落ちて死んだら寝覚めが悪いからさ」
つんと逸らせた綺麗な横顔は雨にずぶ濡れで、普段の高慢な美少年の面影は皆無だったが、その貌は暁人が今まで見た中で一番美しい貌であった。
「…薫…ありがとう…」
声に出すと胸が詰まる。
ぐっと堪えていると、薫が偉そうに言った。
「泣くのはまだ早いよ。あのインチキだらけのお菓子の家に着いて、いけ好かないヤツの鼻をあかしてからだ」
そうして、暁人を見つめにやりと笑ったのだ。
暁人は必死に走らせていた馬の手綱を一瞬緩める。
…薫…の声…?
まさか…。
薫は乗馬が大嫌いだし、濡れるのも大嫌いだ。
それから本当は自分よりもっと暗闇が嫌いなのだ。
今でも寝る時はランプの灯りがないと眠れないくらいに…。
…だから、そんな薫が自分を追いかけて来るわけがない。
ふっと寂しく笑いながら、再び森の奥に向って馬を走らせようとしたその時だ。
「暁人!待ってよ!」
土砂降りの雨の中、甲高い薫の声が背後からはっきりと聞こえてきたのだ。
「薫⁈」
暗闇に目を凝らす。
派手な水音と共に、いきなり馬に跨った薫が現れた。
「待てって言ってるだろ!暁人の馬鹿!」
ずぶ濡れの濡れ鼠になりながら、薫は暁人の前に立ち止まり、怒りながら詰め寄る。
「お前が行くなら僕も行く!」
「…薫…」
「…誤解するな。お前があの吊り橋から落ちて死んだら寝覚めが悪いからさ」
つんと逸らせた綺麗な横顔は雨にずぶ濡れで、普段の高慢な美少年の面影は皆無だったが、その貌は暁人が今まで見た中で一番美しい貌であった。
「…薫…ありがとう…」
声に出すと胸が詰まる。
ぐっと堪えていると、薫が偉そうに言った。
「泣くのはまだ早いよ。あのインチキだらけのお菓子の家に着いて、いけ好かないヤツの鼻をあかしてからだ」
そうして、暁人を見つめにやりと笑ったのだ。