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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
…鷹司の追憶を断ち切らせるかのように、廊下から慌ただしい足音が近づいてきた。
緊急を知らせるようなノックの音。
普段は能面の如く無表情な執事が、珍しく狼狽した表情を浮かべている。
「失礼いたします。…紳一郎様。
今、山の管理人より火急の連絡が入りました」
鷹司はちらりと視線のみ上げる。
「…どうした」
「先ほど、突然の落雷により山の吊り橋が崩落したとのことです。…確か、縣様と大紋様のご子息様方がそちらに向かわれていたのではと…」
鷹司ははっと眼を見開き、素早く立ち上がる。
ゴブラン織りのカーテンをたくし上げ、窓の外を見上げた。
稲光が昼間のように光り、雷鳴が狂ったように鳴り響くのが眼と耳に飛び込む。
「…すぐ下僕に吊り橋を見に行かせろ。…それから…縣男爵夫人と大紋夫人に連絡を取ってくれ。」
「かしこまりました」
執事は一礼をすると、素早く急務に向った。
鷹司は天を仰ぎ、唇を噛みしめる。
「…本当に馬鹿なヘンゼルとグレーテルだ…!」
雷鳴は止むことを知らない。
厚い窓硝子に叩きつける雨粒と風…そして落雷で起こる地響きの衝撃が伝わる。
鷹司は端正な貌をやや蒼ざめさせ、風のように自室を後にしたのだった。
緊急を知らせるようなノックの音。
普段は能面の如く無表情な執事が、珍しく狼狽した表情を浮かべている。
「失礼いたします。…紳一郎様。
今、山の管理人より火急の連絡が入りました」
鷹司はちらりと視線のみ上げる。
「…どうした」
「先ほど、突然の落雷により山の吊り橋が崩落したとのことです。…確か、縣様と大紋様のご子息様方がそちらに向かわれていたのではと…」
鷹司ははっと眼を見開き、素早く立ち上がる。
ゴブラン織りのカーテンをたくし上げ、窓の外を見上げた。
稲光が昼間のように光り、雷鳴が狂ったように鳴り響くのが眼と耳に飛び込む。
「…すぐ下僕に吊り橋を見に行かせろ。…それから…縣男爵夫人と大紋夫人に連絡を取ってくれ。」
「かしこまりました」
執事は一礼をすると、素早く急務に向った。
鷹司は天を仰ぎ、唇を噛みしめる。
「…本当に馬鹿なヘンゼルとグレーテルだ…!」
雷鳴は止むことを知らない。
厚い窓硝子に叩きつける雨粒と風…そして落雷で起こる地響きの衝撃が伝わる。
鷹司は端正な貌をやや蒼ざめさせ、風のように自室を後にしたのだった。