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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「どういうことですの?鷹司様。…こんな嵐の中に二人だけで山小屋に出掛けただなんて…!」
深夜に突然鷹司に呼び出された絢子は、事の次第を聞き、普段のおとなしやかでもの静かな様子をかなぐり捨てたように、鷹司に詰め寄った。
「絢子さん、落ち着いて」
隣に座った光は珍しく冷静に絢子を宥める。
しかしその光の貌には他人に見せたことがないような焦燥感が色濃く浮かんでいた。
「申し訳ありません。全ては僕の責任です。…ゲームをしようと…つい、けしかけてしまったのです」
光は美しい眉を顰める。
「ゲーム?」
「何のゲームですの?」
絢子が詰問するかのように尋ねる。
「…内容は申し上げられません」
「なぜですの⁈」
「…申し上げられませんが…とにかく、二人は恐らくは森を抜け、吊り橋を渡り、向かいの猟場の山小屋に向かいました」
絢子は震える声で言い放つ。
「そんな‼︎こんな嵐の夜に…まだ12歳の子供たちが馬に乗って吊り橋を渡るだなんて…!…無茶すぎますわ!なぜ…なぜお止め下さらなかったのですか⁈」
向かい側に座る鷹司を掴みかからんばかりの勢いの絢子の手を光は優しく握りしめる。
「絢子さん、落ち着いて。…鷹司さんを責めても仕方がないわ。とにかく今は状況を見て、山小屋を確認に行くのが先決よ」
「…光様…」
絢子はぽろぽろと涙を流し始めた。
「…春馬様がお留守なのに…どうしよう…どうしよう…。暁人さんに何かがあったら…私…私…もう生きてはいけない…!」
光は泣き出した絢子の肩を抱き締めた。
「絢子さん、お泣きにならないで。大丈夫よ。暁人さんはしっかりしていらっしゃるから、無事に山小屋にお着きになっているわ」
力強く慰めていると突然、びしょ濡れの下僕が血相を変えて客間に駆け込んできた。
「た、大変です!紳一郎様!…馬が…栗毛の馬が鞍も付けずに今、戻ってまいりました!」
光は絶句し、絢子は喉の奥で小さく叫ぶと、そのまま光の胸で泣き崩れた。
鷹司はさながら亡霊のように立ち上がり、蒼ざめた貌のまま瞬きもせずにひたすら空を見据え続けるのであった。
深夜に突然鷹司に呼び出された絢子は、事の次第を聞き、普段のおとなしやかでもの静かな様子をかなぐり捨てたように、鷹司に詰め寄った。
「絢子さん、落ち着いて」
隣に座った光は珍しく冷静に絢子を宥める。
しかしその光の貌には他人に見せたことがないような焦燥感が色濃く浮かんでいた。
「申し訳ありません。全ては僕の責任です。…ゲームをしようと…つい、けしかけてしまったのです」
光は美しい眉を顰める。
「ゲーム?」
「何のゲームですの?」
絢子が詰問するかのように尋ねる。
「…内容は申し上げられません」
「なぜですの⁈」
「…申し上げられませんが…とにかく、二人は恐らくは森を抜け、吊り橋を渡り、向かいの猟場の山小屋に向かいました」
絢子は震える声で言い放つ。
「そんな‼︎こんな嵐の夜に…まだ12歳の子供たちが馬に乗って吊り橋を渡るだなんて…!…無茶すぎますわ!なぜ…なぜお止め下さらなかったのですか⁈」
向かい側に座る鷹司を掴みかからんばかりの勢いの絢子の手を光は優しく握りしめる。
「絢子さん、落ち着いて。…鷹司さんを責めても仕方がないわ。とにかく今は状況を見て、山小屋を確認に行くのが先決よ」
「…光様…」
絢子はぽろぽろと涙を流し始めた。
「…春馬様がお留守なのに…どうしよう…どうしよう…。暁人さんに何かがあったら…私…私…もう生きてはいけない…!」
光は泣き出した絢子の肩を抱き締めた。
「絢子さん、お泣きにならないで。大丈夫よ。暁人さんはしっかりしていらっしゃるから、無事に山小屋にお着きになっているわ」
力強く慰めていると突然、びしょ濡れの下僕が血相を変えて客間に駆け込んできた。
「た、大変です!紳一郎様!…馬が…栗毛の馬が鞍も付けずに今、戻ってまいりました!」
光は絶句し、絢子は喉の奥で小さく叫ぶと、そのまま光の胸で泣き崩れた。
鷹司はさながら亡霊のように立ち上がり、蒼ざめた貌のまま瞬きもせずにひたすら空を見据え続けるのであった。