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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「…あんのバカ馬め!帰ったら馬刺しにしてやる!絶対に!」
薫は吹き荒ぶ豪雨の中、暁人に抱きかかえられるように山小屋に飛び込むと叫んだ。
「ちくしょう!あのバカ馬め!僕を吊り橋寸前で振り落としやがって‼︎」
…二人が吊り橋を渡る段になった時、空に突然稲光りと雷鳴が轟いた。
薫を乗せた栗毛の馬は不意に狂ったように暴れ出し、前脚を高々と上げ、嘶いた。
「わ〜〜っ!よ、よせ!バカ〜!」
必死に手綱を掴んだが、もう遅かった。
次の瞬間、薫の身体は空中に放り投げられ、あっと言う間に地面に叩きつけられたのだった。
「薫!」
暁人は叫ぶなり馬から降り立ち、薫に駆け寄る。
泥濘んだ地面に転がっている薫を抱き起こす。
「薫!薫!大丈夫⁉︎」
薫は唸りながら目を開ける。
「畜生!なんなんだよ!あのバカ馬は!臆病なヤツめ!」
毒づく薫にほっとしたのもつかの間、栗毛の馬が目も止まらぬ速さで疾走してゆくのが目に入った。
薫は大きな眼を更に見開き、立ち上がる。
「おい!ふざけんな!戻ってこい、バカ馬!」
しかし薫の叫びも虚しく、栗毛の馬はあっという間に今来た道を鞍を振り落としながら駆けて行ってしまったのだ。
「バ、バカ野郎〜!だから馬なんか大っ嫌いなんだよ〜〜っ!」
泥濘の中、地団駄を踏む薫に暁人は静かに手を差し伸べる。
「…おいで、薫。一緒に行こう」
「で、でも…あの馬に二人、乗れるのか?」
暁人の馬はやや小柄な馬だった。
しかも今の雷鳴でだいぶ興奮しているようだ。
二人も乗ったら暴れ出さない保証はない。
…しかも揺れる不安定な吊り橋を、渡り切ることができるのか…。
不安が逆巻く薫を安心させるように暁人は笑いかけた。
「大丈夫、僕を信じて」
「…暁人…」
薫は一瞬の躊躇いの後、決心したかのように頷いた。
「…分かったよ、暁人。信じる」
薫の泥だらけの小さな白い手を暁人が愛おしそうに握りしめる。
「…薫…」
「…その代わり、もしあの谷底に落ちたら…どこにいても化けて出てやるからな‼︎」
照れ隠しのように憎まれ口を聞く薫に、暁人は嬉しそうに微笑んだ。
…そして、愛の告白のように囁いた。
「薫と死ねるなら本望だ」
薫は吹き荒ぶ豪雨の中、暁人に抱きかかえられるように山小屋に飛び込むと叫んだ。
「ちくしょう!あのバカ馬め!僕を吊り橋寸前で振り落としやがって‼︎」
…二人が吊り橋を渡る段になった時、空に突然稲光りと雷鳴が轟いた。
薫を乗せた栗毛の馬は不意に狂ったように暴れ出し、前脚を高々と上げ、嘶いた。
「わ〜〜っ!よ、よせ!バカ〜!」
必死に手綱を掴んだが、もう遅かった。
次の瞬間、薫の身体は空中に放り投げられ、あっと言う間に地面に叩きつけられたのだった。
「薫!」
暁人は叫ぶなり馬から降り立ち、薫に駆け寄る。
泥濘んだ地面に転がっている薫を抱き起こす。
「薫!薫!大丈夫⁉︎」
薫は唸りながら目を開ける。
「畜生!なんなんだよ!あのバカ馬は!臆病なヤツめ!」
毒づく薫にほっとしたのもつかの間、栗毛の馬が目も止まらぬ速さで疾走してゆくのが目に入った。
薫は大きな眼を更に見開き、立ち上がる。
「おい!ふざけんな!戻ってこい、バカ馬!」
しかし薫の叫びも虚しく、栗毛の馬はあっという間に今来た道を鞍を振り落としながら駆けて行ってしまったのだ。
「バ、バカ野郎〜!だから馬なんか大っ嫌いなんだよ〜〜っ!」
泥濘の中、地団駄を踏む薫に暁人は静かに手を差し伸べる。
「…おいで、薫。一緒に行こう」
「で、でも…あの馬に二人、乗れるのか?」
暁人の馬はやや小柄な馬だった。
しかも今の雷鳴でだいぶ興奮しているようだ。
二人も乗ったら暴れ出さない保証はない。
…しかも揺れる不安定な吊り橋を、渡り切ることができるのか…。
不安が逆巻く薫を安心させるように暁人は笑いかけた。
「大丈夫、僕を信じて」
「…暁人…」
薫は一瞬の躊躇いの後、決心したかのように頷いた。
「…分かったよ、暁人。信じる」
薫の泥だらけの小さな白い手を暁人が愛おしそうに握りしめる。
「…薫…」
「…その代わり、もしあの谷底に落ちたら…どこにいても化けて出てやるからな‼︎」
照れ隠しのように憎まれ口を聞く薫に、暁人は嬉しそうに微笑んだ。
…そして、愛の告白のように囁いた。
「薫と死ねるなら本望だ」