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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
暖炉の薪が漸く赤々と燃えだした。
二人はほっと一息つき、火の前に座り込む。
二人とも素肌にブランケットを巻きつけた格好だ。
薫はキャビネットの中のブランデーを目敏く見つけ、二つのグラスに注ぐ。
「…お酒は…」
と、暁人が言いかけ…すぐに
「非常事態だから、いいか」
と考え直す。
薫はにやりと笑い
「…だいぶ頭が柔らかくなったな、暁人」
と、グラスを差し出す。
ちびちびとブランデーを舐める。
じわじわと身体が温まってくる。
気持ちに余裕が出てきて、部屋の中をぐるりと見渡す。
…昼間も思ったが、洒落た部屋だ。
ランプの油や、薪、タオルや寝具が真新しく時々使われている節がある。
「…ここ、あいつが時々使っているのかな…」
…異母兄弟で…もしかしたら、実の父親かも知れない男に身体を奪われた鷹司…。
もしそうだとしたら…鷹司は何を思いながら、この山小屋に入り浸っているのか…。
…憎しみか、嫌悪か…それとも…。
「…あ、先輩が言っていた指輪を探さなくちゃ…」
暁人が立ち上がる。
…そういえば、指輪を取ってこい…て言っていたな。
森番が残していった指輪…。
そんなものを持っていってどうするつもりなんだ…?
指輪はすぐに見つかった。
暖炉の上に立て掛けられている写真立ての後ろだ。
「…あった」
暁人は大切そうに掌に乗せる。
…何の変哲もない銀の指輪だ。
装飾も何もない簡素な指輪…。
暖炉の前に座り、暁人はその指輪をじっくり見つめた。
薫も覗き込む。
「…地味な指輪だな。その森番は何でこんな指輪を置いていったのかな…」
暁人が暖炉の炎に指輪を翳す。
そして、あっと息を飲んだ。
「…文字が刻んである」
俄然興味を持った薫が暁人にくっつきながら指輪を覗き込む。
「何?何て?」
暁人はじっと指輪の内側を見つめる。
「…しんいちろうさま…あいするひと…」
たどたどしい…子どものような幼い文字がそれでも一生懸命に刻んであった。
「…これって…」
二人は貌を見合わせ、黙り込んだ。
ぱちぱちと燃える薪が爆ぜる音だけが部屋を支配した。
二人はほっと一息つき、火の前に座り込む。
二人とも素肌にブランケットを巻きつけた格好だ。
薫はキャビネットの中のブランデーを目敏く見つけ、二つのグラスに注ぐ。
「…お酒は…」
と、暁人が言いかけ…すぐに
「非常事態だから、いいか」
と考え直す。
薫はにやりと笑い
「…だいぶ頭が柔らかくなったな、暁人」
と、グラスを差し出す。
ちびちびとブランデーを舐める。
じわじわと身体が温まってくる。
気持ちに余裕が出てきて、部屋の中をぐるりと見渡す。
…昼間も思ったが、洒落た部屋だ。
ランプの油や、薪、タオルや寝具が真新しく時々使われている節がある。
「…ここ、あいつが時々使っているのかな…」
…異母兄弟で…もしかしたら、実の父親かも知れない男に身体を奪われた鷹司…。
もしそうだとしたら…鷹司は何を思いながら、この山小屋に入り浸っているのか…。
…憎しみか、嫌悪か…それとも…。
「…あ、先輩が言っていた指輪を探さなくちゃ…」
暁人が立ち上がる。
…そういえば、指輪を取ってこい…て言っていたな。
森番が残していった指輪…。
そんなものを持っていってどうするつもりなんだ…?
指輪はすぐに見つかった。
暖炉の上に立て掛けられている写真立ての後ろだ。
「…あった」
暁人は大切そうに掌に乗せる。
…何の変哲もない銀の指輪だ。
装飾も何もない簡素な指輪…。
暖炉の前に座り、暁人はその指輪をじっくり見つめた。
薫も覗き込む。
「…地味な指輪だな。その森番は何でこんな指輪を置いていったのかな…」
暁人が暖炉の炎に指輪を翳す。
そして、あっと息を飲んだ。
「…文字が刻んである」
俄然興味を持った薫が暁人にくっつきながら指輪を覗き込む。
「何?何て?」
暁人はじっと指輪の内側を見つめる。
「…しんいちろうさま…あいするひと…」
たどたどしい…子どものような幼い文字がそれでも一生懸命に刻んであった。
「…これって…」
二人は貌を見合わせ、黙り込んだ。
ぱちぱちと燃える薪が爆ぜる音だけが部屋を支配した。