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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
窓の外は相変わらず凄まじい嵐だ。
がたがたと窓硝子を揺らす強風と豪雨がいつまでも止まない。
雷もまだ依然として稲妻と雷鳴を轟かせている。
「…とりあえず、帰るのは明日だな…」
窓の外を見ながら暁人が呟いた。
「ああ、もちろんだ。明日になったら雨も止んでいるだろうし…」
そう答え、薫は眠そうに欠伸をして隣室の寝台に飛び乗った。
「僕はもう寝る。疲れた」
暁人が困ったような、切ないような微笑を浮かべた。
「…うん。おやすみ、薫…」
ふかふかの寝台に潜り込みながら、薫は怪訝そうな貌をした。
「なんだよ、寝ないのか?」
「…だって…僕と寝るの…嫌だろう?」
…さっきのことを気にしているのだと合点がいき、薫はじろりと暁人を睨んだ。
「…もう二度としないか?」
「しないよ!薫が嫌がることはしない!」
「…じゃあ、いいよ。来いよ」
薫は上掛けを捲った。
少しの躊躇いののちに、暁人はゆっくりと薫の隣に身体を滑り込ませた。

ランプの灯りを細くして、上掛けをしっかり掛ける。
狂ったように鳴り響く風と雨、そして時折光り、轟く雷のせいでやはりすぐには寝付けない。

暗闇の中、薫はぽつりと呟く。
「…あの指輪さ、どういうつもりだったんだろう…」
…わざわざ鷹司の名前を刻み、愛を告白していた…。
ややもして、暁人は答えた。
「…僕は何となく分かる。…あの森番は、鷹司先輩を愛しているんだ。…それが…報われない愛だとしても…。愛さずにはいられなかったんだ…」
暗闇に響く暁人の声は妙に哀しげで、薫は一瞬息を飲む。
「…でも、兄なんだろう?…それから…父親かも知れないのに?…あと、無理やり先輩を襲ったんだろう?そんなのが愛なのか?」
刺々しい薫の言葉に、暁人は済まなそうに…しかしはっきりと答えた。
「…許されなくても…人は人を好きになってしまうんだよ。…どうしてもその人を自分のものにしたくて、自分でも訳の分からない獣みたいな感情が爆発することもある…」
…薫には分からないかも知れないけれど…と、寂しげに付け加えた。
むっとした薫はすぐさま言い返す。
「なんだよ、人を冷血漢みたいに!…僕だって、だめだって分かってても人を好きになることはあるよ」

隣で暁人が身動ぎをする。
そして、弱々しい声がぽつりと響いた。
「…泉のこと…?」
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