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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
薫は小走りに窓に走り寄る。
「…あれ…鷹司先輩の車と…うちの車だ…」
「え?」
暁人も慌てて窓に並び、外を見つめる。

黒光りするフォードとメルセデスが森を抜け、滑り込んでくる。
二台の車は山小屋の入り口に付けられた。
…中から慌ただしく出て来たのは…暁人の母、絢子と…薫の母、光だ…!

「…うわ…!お母様⁈なんでだ?」
「とにかく早く服を着なくちゃ…!」
二人は急いで暖炉の前にロープを渡らせて、乾かしていた服を取り、早業のように身につけた。

「…もしかして…大事になっている?」
「最悪だ!お母様まで出てくるなんて…」
薫は舌打ちする。
…また怒られるのか…ついてないや。

薫は溜息を吐きながら、ドアのノブに手を掛ける。
ふと思い出したように振り返る。
「…昨夜のことは二人だけの秘密だからな」
暁人は頷く。
「もちろんだ」
…こんなこと、お母様が知ったらショック死してしまうだろう。

そのまま外に出ようとして、薫はもう一度振り返る。
「…あと、僕はまだ泉を諦めていないから」
「…へ⁈」
鳩が豆鉄砲を食らったような貌をした暁人に、薫は意地悪くにやりと笑った。
「…だからお前はまだ幼馴染だ。これからもよろしくな」

「…そんな…!」
心底がっかりしたような失望の声を上げた暁人を尻目に、薫はゆっくりとドアのノブを回した…。
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