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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
いつも光に叱られてばかりいる薫は、光の言葉と態度に戸惑う。
「…お母様…僕の心配、したの?」
「当たり前でしょう!…子どもの無事を願わない母親がどこにいますか!…あなたが死んでしまったら…とずっと考えて…生きた心地がしなかったわ…。どうか生きていてくれますようにと、神様にお祈りしていたのよ…」
ぐずぐずと鼻を鳴らし、真っ赤に泣きはらした目で薫を見つめる。
その白く冷たい手が、無事を確認するかのように、薫の頬を何度も撫でる。
…お母様にこんな風に優しく触れられるのは久しぶりだな…。
心の中にずっと蟠っていた万年雪の塊のようなものが少しずつ溶け出してゆくのが分かった。
「…お母様は…僕が嫌いなんでしょう?菫がいれば、いいんじゃないの?」
光は薫をきつく抱きしめる。
そして怒ったように薫を見つめる。
「馬鹿ね。嫌ってなんかいないわ。…あなたも菫も私にとっては命より大切な子どもたちなのよ…」
「…でも、お母様はいつも僕には怒ってばかりだし…」
拗ねたように呟く薫に光は少しつっけんどんに答える。
「…あなたは私にそっくりだからよ」
「お母様が⁉︎僕に⁉︎嘘だ!」
光はふっと笑う。
それは恥じらうような微笑みだった。
「…お行儀も言葉遣いも悪くて癇癪持ち。…負けず嫌いで我儘で学校では問題児扱い…。私も子どもの頃、そんな子どもだったのよ」
「…信じられない…」
薫は目を丸くする。
薫の知る光は礼儀正しく優雅で非の打ち所がない貴婦人のお手本のような女性だからだ。
「私はその性格のせいでとても苦労したの。周りの人達に理解されなくて苛立って反発して…。だからあなたにはそんな私に似て欲しくなかったの。礼也さんのように誰からも愛される人になって欲しくて厳しく躾けようとしたのよ」
光が語る本音は薫を驚かせたが、次第に光に対する温かな気持ちが泉のように溢れてきた。
照れ臭い気持ちを抑えて、光の胸に抱きつく。
…幼い頃にはよく嗅いだ懐かしい光の香水の薫りがする。
「…じゃあ…お母様は僕が好き…?」
返事より先に苦しいくらいに抱き返される。
「愛しているわ、薫。手がかかるけれど私の大切な子どもよ」
「…お母様…」
薫は涙で潤む光の美しい瞳を見つめながら笑った。
「僕もだよ。世界で一番怖いけれど…でもお母様が大好きだ」
「…薫…!」
二人は照れたように笑い合い、強く抱きしめ合った。






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