この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
光と抱き合っていると、少し離れたところで佇む鷹司と目が合った。
鷹司は、相変わらず何を考えているのか分からないような…端正だが表情が読み取りにくい貌をしていたが、そこにはうっすらと羨望の色があった。
しかし彼は一瞬で表情を引き締め、光と絢子の前に進み出るとすらりとした美しい体躯で深々と頭を下げた。
「…この度は私が大人気ない行動を取った為に、お二人を危険な目に合わせてしまいました。本当に…申し訳ありませんでした」
その潔い謝罪に薫は胸を突かれる。
暁人が絢子から離れ、鷹司の前に出る。
「鷹司先輩のせいじゃありません。ゲームに乗ったのは僕です。…僕が自分で行くと決めたのです。強制された訳じゃない。…それに…僕は…」
薫を振り返る。
目を細めて艶やかに微笑う暁人に、薫は一瞬どきりとする。
「…ここに来て良かったです。…一生、忘れられない経験が出来ましたから…」
薫は少し咳払いしながら、口を開く。
「僕も結構楽しかったかな。…あのバカ馬に振り落とされたのは無念だったけれどね」
格好をつける薫の頭を光が軽く叩く。
「あんなに下手くそなのに!嵐の夜に馬に乗るなんて百年早いのよ。…帰ったらまた特訓ですからね!」
「え〜⁉︎…なんだよ。お母様の鬼ババ‼︎」
光が美しい眉を逆立てる。
「まあ!なんて子なの?お母様に向ってババア呼ばわり⁉︎」
「鬼ババは鬼ババだからそう言ったんだよ!」
ムキになって言い争う光と薫を見て、鷹司が思わず吹き出す。
「…社交界の華の光様を鬼ババ呼ばわりは酷いな」
…でも…と、ふいに優しい眼差しになり、呟くように言った。
「…薫も大紋もやっぱり幸せな子どもだ…。少しだけ羨ましいよ…」
暁人ははっと大切なことを思い出し、一歩前に進んだ。
「…約束通りに持ってきました」
暁人がポケットから取り出した銀の指輪に、鷹司は目を見開く。
「…これ、よく見た方がいいですよ。…多分、先輩にとってとても大切なことが書かれている…」
指輪を受け取りながら、鷹司は怪訝そうな貌をした。
嵐が去り、透明感が増した朝の陽の光にその指輪を翳す。
…鷹司は息を呑んだ。
「…まさか…そんな…」
…震える声はとてもか細く、頼りなげだった。
鷹司は、相変わらず何を考えているのか分からないような…端正だが表情が読み取りにくい貌をしていたが、そこにはうっすらと羨望の色があった。
しかし彼は一瞬で表情を引き締め、光と絢子の前に進み出るとすらりとした美しい体躯で深々と頭を下げた。
「…この度は私が大人気ない行動を取った為に、お二人を危険な目に合わせてしまいました。本当に…申し訳ありませんでした」
その潔い謝罪に薫は胸を突かれる。
暁人が絢子から離れ、鷹司の前に出る。
「鷹司先輩のせいじゃありません。ゲームに乗ったのは僕です。…僕が自分で行くと決めたのです。強制された訳じゃない。…それに…僕は…」
薫を振り返る。
目を細めて艶やかに微笑う暁人に、薫は一瞬どきりとする。
「…ここに来て良かったです。…一生、忘れられない経験が出来ましたから…」
薫は少し咳払いしながら、口を開く。
「僕も結構楽しかったかな。…あのバカ馬に振り落とされたのは無念だったけれどね」
格好をつける薫の頭を光が軽く叩く。
「あんなに下手くそなのに!嵐の夜に馬に乗るなんて百年早いのよ。…帰ったらまた特訓ですからね!」
「え〜⁉︎…なんだよ。お母様の鬼ババ‼︎」
光が美しい眉を逆立てる。
「まあ!なんて子なの?お母様に向ってババア呼ばわり⁉︎」
「鬼ババは鬼ババだからそう言ったんだよ!」
ムキになって言い争う光と薫を見て、鷹司が思わず吹き出す。
「…社交界の華の光様を鬼ババ呼ばわりは酷いな」
…でも…と、ふいに優しい眼差しになり、呟くように言った。
「…薫も大紋もやっぱり幸せな子どもだ…。少しだけ羨ましいよ…」
暁人ははっと大切なことを思い出し、一歩前に進んだ。
「…約束通りに持ってきました」
暁人がポケットから取り出した銀の指輪に、鷹司は目を見開く。
「…これ、よく見た方がいいですよ。…多分、先輩にとってとても大切なことが書かれている…」
指輪を受け取りながら、鷹司は怪訝そうな貌をした。
嵐が去り、透明感が増した朝の陽の光にその指輪を翳す。
…鷹司は息を呑んだ。
「…まさか…そんな…」
…震える声はとてもか細く、頼りなげだった。