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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「…そんなことがあったのですか…」
月城はバーのスツールに座る暁の肩に温かなニットのカーディガンを掛けてやりながら驚いたように眉を上げた。
…来週はもう9月の声を聞く軽井沢では、夜になると気温が一桁になることもある。
ここ、BAR Casablancaの古めかしい暖炉にも昨日から薪を入れたのだと、先ほどマスターが話していた。

暁は月城の優しい心遣いに嬉しそうに彼を見上げながら、微笑う。

「…うん。君が綾香さんの御用でここを離れた先週のことだ。僕もたまたま大学時代の友人の別荘に招かれていたから、帰ってから知って驚いたよ」
…薫と暁人が嵐の夜に二人だけで鷹司の別荘から吊り橋を渡り山小屋まで馬で駆けたことは、しばらく屋敷の使用人達の間でも大いに話題になったのだ。

「暁人様はともかく、薫様がまさか…てね。みんな半信半疑なものだから、薫は膨れてるよ」
月城は小さく笑う。
確かにあの、貌は暁に生き写しだが気性は我儘で嫌いな事には梃子でも動かない薫が暁人の為とはいえ、そんな危険な行為をするのは俄かには信じ難いからだ。
「兄さんと春馬さんは、男の子はそれくらいに気骨がある方が頼もしいって笑っていらしたけれど、絢子さんは暫く寝込まれてしまったくらいにご心労だったみたいだ」
…優しい暁人は絢子が寝込んでいる間、ずっと傍で看病していたらしい。
…暁人くんは本当にいい子だな…。
暁はこの出来事以来また一段と大人びた暁人の風貌を思い出す。

「…光様と薫様のご関係はいかがですか?」
月城はギムレットを口に運ぶと尋ねる。
光が薫の無事を確認した途端、泣きながら薫を抱き締めたことは、薫の武勇伝以上に使用人たちを沸かせたからだ。
それくらいに光と薫の犬猿の仲は有名であったのだ。

暁は可笑しそうに笑い、マルガリータを飲む。
「…それがね…」

…暁は昼間、馬場で見た光景を思い出す。

「…痛ったあ…‼︎…なんだよ、このバカ馬!」
アレイオンから振り落とされ、地面に転がった薫は悲鳴を上げる。
「立ちなさい。…落馬するのは貴方の姿勢が悪いからだわ。早く立ちなさい」
騎乗したまま涼しい貌で息子を見下ろす光に、薫は癇癪を起こし、大声で叫ぶ。
「…なんだよ、鬼ババ!メドゥーサ!誰か助けて〜ッ!鬼ババに殺されるよ〜ッ‼︎」
「薫ッ!黙りなさいッ!」
…光は正に鬼の形相になった…。






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