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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
月城が可笑しそうに声を立てて笑う。
光の怒り貌が手に取るように想像できたからだ。
暁も一緒に笑い転げながら、それでもしみじみと付け加えた。
「…二人は相変わらずだ。…でも…そうだな、二人の間の温度は少し温かくなったみたいだ。…良かったよ」
相変わらず光は薫に厳しいし、小言も言う。
けれど、その眼差しには以前より優しみが確かに加わった。
薫も相変わらず光に反抗しながらも、どこか光に対して距離を縮めてきているような雰囲気だ。
二人の関係に敏感な礼也はそのことを感じ取り
「正に雨降って地固まる…だな」
と目を細めながら暁に囁いたのだ。
「…しかし、暁人様はなぜそのような賭けに乗られたのでしょうか…」
月城は不思議そうに首を傾げた。
…暁人は年より大人びて穏やかでとても冷静な少年だ。
いくら学院の先輩に挑発されたからと言って、無謀な賭けに乗るような軽率な少年ではないからだ。
「…それが…二人ともそのことだけは絶対に喋ろうとしないんだ。…どんな賭けだったのかな…」
光や絢子が何度も聞いても二人は貝のように押し黙っていた。
そして…ちらりと視線を合わすと、お互いに秘密めいた笑みを微かに浮かべたのを暁は見逃さなかった。
暁は少し意外に思った。
今まで薫が暁人を見る眼差しはどこか高慢でぞんざいなものであった。
けれど今見たそれは…少し恥らうような、媚びるような…やや色めいたものだったのだ。
薫はすぐに暁人から視線を外したが、暁人は色濃い恋情を感じさせるような…切ない眼差しを薫に向け続けた。
…暁人くんが薫に恋をしているのは薄々分かっていたけれど…。
暁はふっと笑みを漏らす。
…薫が彼をどう思っているかは分からない…。
でも、人は思いがけずに、何かの拍子に恋に堕ちてしまうものだ…。
どうしようもない激情に突き動かされて…。
隣で静かにグラスを傾ける怜悧な美貌の男にふいに甘えたくなる。
…マスターは気を利かせて、新しいカクテルをカウンターに置くとさりげなく奥に引き込んでいた。
暁はそっと月城の肩に頭を持たせかける。
…優しい美声が頭上から響く。
「…どうされましたか…?」
「…僕は気がついたら君に恋をしていたな…て思っていた…それも、苦しくて切なくて…堪らない恋だ…」
「…暁様…」
カウンターに置かれた透き通るように白く、硝子細工のように繊細な指をそっと握り締める。
光の怒り貌が手に取るように想像できたからだ。
暁も一緒に笑い転げながら、それでもしみじみと付け加えた。
「…二人は相変わらずだ。…でも…そうだな、二人の間の温度は少し温かくなったみたいだ。…良かったよ」
相変わらず光は薫に厳しいし、小言も言う。
けれど、その眼差しには以前より優しみが確かに加わった。
薫も相変わらず光に反抗しながらも、どこか光に対して距離を縮めてきているような雰囲気だ。
二人の関係に敏感な礼也はそのことを感じ取り
「正に雨降って地固まる…だな」
と目を細めながら暁に囁いたのだ。
「…しかし、暁人様はなぜそのような賭けに乗られたのでしょうか…」
月城は不思議そうに首を傾げた。
…暁人は年より大人びて穏やかでとても冷静な少年だ。
いくら学院の先輩に挑発されたからと言って、無謀な賭けに乗るような軽率な少年ではないからだ。
「…それが…二人ともそのことだけは絶対に喋ろうとしないんだ。…どんな賭けだったのかな…」
光や絢子が何度も聞いても二人は貝のように押し黙っていた。
そして…ちらりと視線を合わすと、お互いに秘密めいた笑みを微かに浮かべたのを暁は見逃さなかった。
暁は少し意外に思った。
今まで薫が暁人を見る眼差しはどこか高慢でぞんざいなものであった。
けれど今見たそれは…少し恥らうような、媚びるような…やや色めいたものだったのだ。
薫はすぐに暁人から視線を外したが、暁人は色濃い恋情を感じさせるような…切ない眼差しを薫に向け続けた。
…暁人くんが薫に恋をしているのは薄々分かっていたけれど…。
暁はふっと笑みを漏らす。
…薫が彼をどう思っているかは分からない…。
でも、人は思いがけずに、何かの拍子に恋に堕ちてしまうものだ…。
どうしようもない激情に突き動かされて…。
隣で静かにグラスを傾ける怜悧な美貌の男にふいに甘えたくなる。
…マスターは気を利かせて、新しいカクテルをカウンターに置くとさりげなく奥に引き込んでいた。
暁はそっと月城の肩に頭を持たせかける。
…優しい美声が頭上から響く。
「…どうされましたか…?」
「…僕は気がついたら君に恋をしていたな…て思っていた…それも、苦しくて切なくて…堪らない恋だ…」
「…暁様…」
カウンターに置かれた透き通るように白く、硝子細工のように繊細な指をそっと握り締める。