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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第4章 ハニームーン・ペーパームーン 〜蜜・月・旅・行〜
少しして暁は洋服を脱ぎ、恐る恐る庭に出て露天風呂に脚を踏み入れた。
まだ陽光明るい昼日中に裸になることに、一人とは言え羞恥心を覚える。
洗い場で、身体と髪を丁寧に洗い清める。
浴場はイタリア産の大理石で設えられていた。
木曽サワラ材だという天蓋が清々しい薫りを放つ。
縣家は万事西洋風なので、温泉に入る習慣がなかった。
温泉宿に泊まったこともない。
旅行先で宿泊する際もホテルが殆どだ。
…露天風呂は…
春馬さんの別荘で入ったきりだ…。
まだ少年の頃、初めての性体験ののちに、大紋に露天風呂に引き込まれ、再び身体を繋げられた記憶が蘇り…そんな自分に罪悪感を覚える。
頭を振り、切ない記憶を一掃させる。
温泉は硫黄の匂いも少なく、柔らかく暁の身体に纏わりつく。
とろりとした湯に身を浸すと、緊張していた身体と心が少しずつ解れ、身体中の細胞に湯の暖かな癒しと恵みが染み渡るのが分かる。
この温泉は松本城主の御殿湯だったという由緒正しい歴史を持つらしい。
それに相応しい品格を保つ温泉の造りや佇まいだった。
目の前に広がるのは北アルプスの山々の峰だ。
まだ紅葉には早いので、深緑の色濃い山の稜線がくっきりと見え、どこまでも広がる青空とのコントラストが素晴らしい。
遠くの空で雲雀が鳴いていた。
すっかりリラックスした暁はほっと溜息を吐いた。
…と、今朝方、暁を送り出してくれた礼也の貌を思い出した。
「本当に一緒に帰らないのか?」
礼也はやや不服そうに尋ねる。
光が薫を車に乗り込むよう急かしながら、礼也を窘める。
「礼也さん。暁さんがお気の毒だわ。一度お許しになったのだから、気持ちよく送り出して差し上げてちょうだい」
光は暁から旅行の趣旨を聞いた時に、大変に興奮していたのだ。
「まあ!じゃあ新婚旅行なのね。素敵!ロマンチックだわ。さすが月城ね。楽しんでいらしてね」
光は暁と月城の関係に大変に理解がある。
「フランスでは同性婚なんて珍しくないのよ。最先端の愛の形だわ」
そう励ましてくれた。
愛する妻、光に窘められ礼也は渋々笑顔を作り、暁の白く美しい頬にキスをする。
「…楽しんでおいで。…月城によろしく」
「兄さん、ありがとうございます」
薫が車の窓から貌を出す。
「暁叔父様、月城と旅行なの⁈」
光が薫の頭を軽く叩くと、有無を言わさずに車の中に押し込めた。
まだ陽光明るい昼日中に裸になることに、一人とは言え羞恥心を覚える。
洗い場で、身体と髪を丁寧に洗い清める。
浴場はイタリア産の大理石で設えられていた。
木曽サワラ材だという天蓋が清々しい薫りを放つ。
縣家は万事西洋風なので、温泉に入る習慣がなかった。
温泉宿に泊まったこともない。
旅行先で宿泊する際もホテルが殆どだ。
…露天風呂は…
春馬さんの別荘で入ったきりだ…。
まだ少年の頃、初めての性体験ののちに、大紋に露天風呂に引き込まれ、再び身体を繋げられた記憶が蘇り…そんな自分に罪悪感を覚える。
頭を振り、切ない記憶を一掃させる。
温泉は硫黄の匂いも少なく、柔らかく暁の身体に纏わりつく。
とろりとした湯に身を浸すと、緊張していた身体と心が少しずつ解れ、身体中の細胞に湯の暖かな癒しと恵みが染み渡るのが分かる。
この温泉は松本城主の御殿湯だったという由緒正しい歴史を持つらしい。
それに相応しい品格を保つ温泉の造りや佇まいだった。
目の前に広がるのは北アルプスの山々の峰だ。
まだ紅葉には早いので、深緑の色濃い山の稜線がくっきりと見え、どこまでも広がる青空とのコントラストが素晴らしい。
遠くの空で雲雀が鳴いていた。
すっかりリラックスした暁はほっと溜息を吐いた。
…と、今朝方、暁を送り出してくれた礼也の貌を思い出した。
「本当に一緒に帰らないのか?」
礼也はやや不服そうに尋ねる。
光が薫を車に乗り込むよう急かしながら、礼也を窘める。
「礼也さん。暁さんがお気の毒だわ。一度お許しになったのだから、気持ちよく送り出して差し上げてちょうだい」
光は暁から旅行の趣旨を聞いた時に、大変に興奮していたのだ。
「まあ!じゃあ新婚旅行なのね。素敵!ロマンチックだわ。さすが月城ね。楽しんでいらしてね」
光は暁と月城の関係に大変に理解がある。
「フランスでは同性婚なんて珍しくないのよ。最先端の愛の形だわ」
そう励ましてくれた。
愛する妻、光に窘められ礼也は渋々笑顔を作り、暁の白く美しい頬にキスをする。
「…楽しんでおいで。…月城によろしく」
「兄さん、ありがとうございます」
薫が車の窓から貌を出す。
「暁叔父様、月城と旅行なの⁈」
光が薫の頭を軽く叩くと、有無を言わさずに車の中に押し込めた。