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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第4章 ハニームーン・ペーパームーン 〜蜜・月・旅・行〜
「…つき…しろ…」
濡れた黒い宝石のような眼差しで見上げる。
「…何ですか?」
「…触らせて…つきしろの…」
「どこを…ですか?…ちゃんと仰ってください」
月城の冴え冴えとした瞳が艶を含みながら、意地悪く細められる。
暁は月城の首筋に腕を絡め、引き寄せる。
その形の良い耳に震える声で淫語を囁く。
「…いいですよ…」
月城が微笑して褥の上に胡座をかく。

暁はゆっくりと起き上がる。
悴む白く華奢な手が月城の藍色の浴衣の裾を割り開く。
「…あ…っ…」

…月城は下着を着けていなかった。
筋肉質のよく引き締まった太腿の奥…鼠蹊部には、天を仰ぐ美しくも雄々しい像の牡が屹立していた。
脈々と血管を浮かせ、まるで名刀のように鋭く勃ち上がるそれを、暁は眼を潤ませながらそっと触れる。
「…硬…い…」
月城は悠然と脚を開きながら、優しい声で囁く。
「貴方が欲しくて、こうなったのですよ…」
上目遣いで男を見上げ、微笑む。
「…嬉しい…」

暁はおずおずと月城の牡の幹にくちづける。
柔らかくしっとりした唇が男の幹全体を丹念に接吻し、やがてその果実のように紅い滑らかな舌で、まるで甘い飴細工でも与えられたかのように熱心に舐め回す。

…暁は口淫が下手だった。
今では見違えるように巧みに上手くなったが、かつてはすぐに咳き込んだり苦しがったりした。
暁の性技の殆どは成熟し長けていたのだが、口淫だけはなかなか上手くならなかったのを月城が辛抱強く仕込んだのだ。

…恐らくは、大紋が口淫を強いなかったのだろう。
大紋は暁を真綿で包むように大切にしていた。
セックスも乱暴にしたことなど皆無だったろうし、暁が少しでも苦しがれば、口淫も止めたのだろう。
青い果実を丹念に育てあげ、最後まで慈しみ続けた。
…彼は完璧な恋人だったのだ。
それゆえ、月城は未だに彼だけには勝てないような気がするし、暁も心のどこかで彼を慕わしく思っているような気がして、子どもじみた嫉妬心に駆られてしまうのだ。

…暁に口淫を仕込んだのは、そんな余りに幼稚な意趣返しなのだと、月城は己に苦笑する。
だが、月城の言うことを素直に聞き、月城の快楽を必死で引き出そうとする暁は、胸が締め付けられるほどに愛おしい。

月城は行為そのものより、必死で舌と指を使い、月城に奉仕する健気で美しい暁の貌を見る方が好きなのだった。




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