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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第4章 ハニームーン・ペーパームーン 〜蜜・月・旅・行〜
暁は光を始め、梨央や綾香、そして絢子と美しい女性は見慣れている。
しかし、葵はそれらの高貴な身分の女性達に比べても遜色がないほどに美しく、品位のある成熟した女性であった。
例えてみるならば、大輪の牡丹の花のような華やかで、しかも嫋嫋とした情感のある美女である。

暁は意を決して尋ねてみる。
「…あの…、葵さんは月城さんとはどのように知り合われたのですか?」
…女性で帝大に入学することはとても稀だ。
月城は親友を介して知りあったと言っていたが…。

葵は昔を思い出すような遠い目をした。
「…私はこの通り…田舎の古い旅館の跡取り娘として育ってまいりました。それが息苦しくて…本が好きだったこともあり女だてらに学者になりたいと、両親の反対を押し切って東京に出て、帝大に入学いたしました。
…そこで月城さんの親友…私のかつての恋人と出逢ったのです。…彼は医師を志す学生でした。…私が申すのもおかしいですが、とてもハンサムで優しくて、優秀で…月城さんと二分するくらいに女学生に人気があったのですよ。…だから…彼が私に告白してくれた時には嬉しかった…。私は若い頃は気ばかり強くて頑固で…男子学生には全く人気がなかったものですから…」
葵の成熟した美貌が不意に少女じみた可憐さを帯びる。
「…彼は月城さんと仲良しでね、私達は三人でよく会ったり、お喋りしたりしていました。…彼は某政治家の方の住み込み書生をしておりましたし、月城さんは伯爵家の執事見習いでいらしたから、会える時間は僅かでしたけれど…その分、密度の濃い楽しい時間でしたわ…」
「…そうだったのですか…」
…自分の知らない月城の若い青春の日々…
彼女はそれに立ち会い、たくさんのことを知っている…。
それが妬ましいほどに羨ましかった。

「…でも…幸せな日々はそう長くは続きませんでした」
葵の二重の瞳が急に暗く翳る。
「…お付き合いを始めて、二年が過ぎた冬のことでした…。彼は当時猛威を振るっていた流行病で、あっけなく亡くなってしまったのです」

暁は眼を見開いた。
ざわざわと夜風に樫の樹々が揺れだした。
葵の白いうなじに落ちるひとすじの後れ毛がゆらりとそよいだ。
「…彼は慈善事業で赤十字病院の手伝いをしていたのです。…昼夜働き詰めに働いて…感染してあっけなく…。伝染するからと私は看取ることもできなかった…」
葵の瞳に透明な涙が溢れ出す。
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