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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第4章 ハニームーン・ペーパームーン 〜蜜・月・旅・行〜
小一時間後、暁はゆっくりと起き上がり部屋風呂でさっと汗を流し着替えると、運ばれていた心尽くしの昼食を月城の給仕で始める。
…昼食も綺麗に整った懐石料理だ。
特別に添えられた信州の新蕎麦と松茸の天婦羅が眼が覚めるほどの美味だった。
「本当は、今日は上高地にお連れしようと思ったのですが…もう昼過ぎですしね」
伯爵のお供で一度上高地を訪れたことがある月城は、その別天地のような美しい自然を暁に是非とも見せたいと計画していたのだ。
…だが上高地に行くのなら、午前中の早い時間に宿を出なくては楽しめない。
苦笑まじりの月城に優しく微笑み返す。
「…いいんだ。僕は君といられたらそれだけで…」
…それは本音だった。どこに出かけなくても月城と二人きりでいられたらそれで十分幸せだった。
月城が暁の湯飲みに熱い煎茶を注ぎながら、口を開いた。
「先ほど葵さんに聞いたのですが、今夜浅間温泉にほど近い深志神社というところで、秋祭りがあるそうです。
神社では歴史あるお神楽も奉納されるとか…。
縁日も出て賑やかだそうですよ。…夕食のあと、行ってみませんか?」
月城の提案に暁は眼を輝かせる。
「秋祭り?…行ったことがない。行きたい!」
貧しい幼少期を過ごしていた暁には、子どもが喜ぶ祭りや縁日は無縁だったのだ。
唯一の想い出は、大川の花火大会だけだ。
子どものようにはしゃぎだした暁を、月城は慈愛の篭った眼差しで見つめた。
「…良かった…。それでは葵さんに揃いの浴衣を用意してもらいましょう。…何しろ私たちは夫婦ですからね…」
「…う、うん…そ、そうだよね…」
いきなりさらりと真顔で告げられ、暁はもじもじしながら俯いた。
白い頬を桜色に染め、照れ隠しのように茶碗蒸しをつつく暁を、月城は愛おしげに見守ったのだった。
…昼食も綺麗に整った懐石料理だ。
特別に添えられた信州の新蕎麦と松茸の天婦羅が眼が覚めるほどの美味だった。
「本当は、今日は上高地にお連れしようと思ったのですが…もう昼過ぎですしね」
伯爵のお供で一度上高地を訪れたことがある月城は、その別天地のような美しい自然を暁に是非とも見せたいと計画していたのだ。
…だが上高地に行くのなら、午前中の早い時間に宿を出なくては楽しめない。
苦笑まじりの月城に優しく微笑み返す。
「…いいんだ。僕は君といられたらそれだけで…」
…それは本音だった。どこに出かけなくても月城と二人きりでいられたらそれで十分幸せだった。
月城が暁の湯飲みに熱い煎茶を注ぎながら、口を開いた。
「先ほど葵さんに聞いたのですが、今夜浅間温泉にほど近い深志神社というところで、秋祭りがあるそうです。
神社では歴史あるお神楽も奉納されるとか…。
縁日も出て賑やかだそうですよ。…夕食のあと、行ってみませんか?」
月城の提案に暁は眼を輝かせる。
「秋祭り?…行ったことがない。行きたい!」
貧しい幼少期を過ごしていた暁には、子どもが喜ぶ祭りや縁日は無縁だったのだ。
唯一の想い出は、大川の花火大会だけだ。
子どものようにはしゃぎだした暁を、月城は慈愛の篭った眼差しで見つめた。
「…良かった…。それでは葵さんに揃いの浴衣を用意してもらいましょう。…何しろ私たちは夫婦ですからね…」
「…う、うん…そ、そうだよね…」
いきなりさらりと真顔で告げられ、暁はもじもじしながら俯いた。
白い頬を桜色に染め、照れ隠しのように茶碗蒸しをつつく暁を、月城は愛おしげに見守ったのだった。