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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る
帰宅すると、玄関に出迎えに出た執事に畳み掛けるように尋ねる。
「十市は?どこにいる?」
紳一郎の鞄とジャケットを受け取りながら、執事は静かに答える。
「階下におりますよ。紳一郎様」
「そう、ありがとう」
言うが早いか、紳一郎は玄関ホールを走り抜け階下に続くドアを開け、狭い階段を駆け下りた。
階下の廊下を行き来していたメイドが紳一郎に気づき、慌てて膝を折ってお辞儀をする。
…本当は主人や主人の家族が使用人達の仕事場であり、居住地である階下を訪れることは好ましいことではないとされている。
使用人には使用人の仕事があるし、主人達が訪れるに相応しい場所ではないからだ。
紳一郎も普段はまず階下には降りない。
今日は特別だ。
…だって十市が来ているんだから…!
わくわくと高鳴る胸を押さえつつ、珈琲の良い香りが漂う使用人達の食堂へ向かう。
十市もまた階下にめったに立ち寄らない。
驚くほど無愛想で人付き合いの悪い十市は他の使用人達と交友を結ぼうとしないからだ。
彼が唯一心を開いているのは料理長の安佐だった。
軽井沢から戻った十市がまず立ち寄るのは安佐のいるキッチンだ。
そして、隣の食堂で安佐の心尽くしの料理を食べるのだ。
…紳一郎はノックするのももどかしく、ドアを押し開けた。
「十市は?どこにいる?」
紳一郎の鞄とジャケットを受け取りながら、執事は静かに答える。
「階下におりますよ。紳一郎様」
「そう、ありがとう」
言うが早いか、紳一郎は玄関ホールを走り抜け階下に続くドアを開け、狭い階段を駆け下りた。
階下の廊下を行き来していたメイドが紳一郎に気づき、慌てて膝を折ってお辞儀をする。
…本当は主人や主人の家族が使用人達の仕事場であり、居住地である階下を訪れることは好ましいことではないとされている。
使用人には使用人の仕事があるし、主人達が訪れるに相応しい場所ではないからだ。
紳一郎も普段はまず階下には降りない。
今日は特別だ。
…だって十市が来ているんだから…!
わくわくと高鳴る胸を押さえつつ、珈琲の良い香りが漂う使用人達の食堂へ向かう。
十市もまた階下にめったに立ち寄らない。
驚くほど無愛想で人付き合いの悪い十市は他の使用人達と交友を結ぼうとしないからだ。
彼が唯一心を開いているのは料理長の安佐だった。
軽井沢から戻った十市がまず立ち寄るのは安佐のいるキッチンだ。
そして、隣の食堂で安佐の心尽くしの料理を食べるのだ。
…紳一郎はノックするのももどかしく、ドアを押し開けた。