この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る
蘭子も暫く紳一郎の貌を見つめていたが、やがて…ふっと艶かしい微笑を浮かべると、唄うように呟いた。
「…紳一郎さん。貴方、恋しているわね…」
まるで巫女のお告げのように言われ紳一郎はたじろぐ。
引きつった紳一郎の貌を面白がるようにゆっくりと近づきながら小さく笑う。
「…しかも道ならぬ恋の上に片想い…。かわいそうな紳一郎さん」
かっと頭に血が上った紳一郎は切り株から立ち上がり、蘭子を睨みつける。
「あんたに何が分かるんだ‼︎…あんたなんかに僕のことをあれこれ言われる筋合いはない!」
「坊ちゃん…!」
諌めるというより、紳一郎を心配しているような声だった。
蘭子は可笑しそうにくすくす笑う。
「綺麗なお貌をして、気の強いこと…。誰に似たのかしらね…」
睨みつける紳一郎を微塵も気にせずに、蘭子はあっさりと背を向け十市に白い手を差し伸べる。
「馬に乗せて。十市」
甘ったるい砂糖菓子のような声…。
十市は逞しい腕で軽々と蘭子を抱き上げると、鞍の上に乗せた。
蘭子は女乗りのまま、
「十市、ありがとう…。貴方は相変わらず素敵ね…」
屈み込みながら十市の貌を両手で持ち上げ、唇にキスをした。
思わず息を飲む紳一郎をちらりと見ると、蠱惑的な微笑を目の端に漂わせる。

蘭子はそのまま馬に鞭をくれると、意外なほど巧みな所作で馬を操り、小径の方へ駆ける。
…道の真ん中に栗毛の馬に跨った金髪碧眼の若く美男な外国人が待っていた。
蘭子はその美男の外国人に近づくと人目も憚らず、馬上でくちづけを交わすと、そのまま不埒な気配を濃厚に漂わせながら二人の前から姿を消した。

紳一郎は形の良い唇を噛み締めながら、吐き捨てるように呟く。
「…最低だ。…あの女…」
どうせあの外国人が今の蘭子の愛人なのだろう。
南軽井沢には蘭子の別宅がある。
恐らくそこを根城に夏の間中、爛れた愛欲の生活を送るのだ。
…なんて不潔な女なんだ。

十市はやや苦々しげな表情をすると、シャツの袖でぐいと唇を拭った。
紳一郎は、腹立たしさにいてもたってもいられない思いだ。
僕の十市に…キスなんか…キスなんかして…!
許せない。…絶対に許せない…!

しかし母のおよそ男なら誰もが靡かずにはいられない美貌や色香漂うエロティックな身体付きなどを思い起こし、遣る瀬ない気持ちになる。
…十市も…やっぱり女が良いのだろうな…と。







/954ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ