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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る
十市に勉強を教えていると、不意にガタガタと窓硝子が激しく鳴り始めた。
十市は勉強を止め、立ち上がる。
いきなり雨粒が吹きつける窓の外を眺めながら呟く。
「…嵐が来ます…」
「え?…さっきまであんなに良い天気だったのに?」
紳一郎も十市の隣に並ぶ。
「夕方、ひんやり冷たい風が吹きました。…あんな風が吹くと必ず嵐になります。…雷も鳴り出すかも知れない」
「…へえ…」

…そういえば、風が突然強く吹き出した。
小屋の周りを取り囲む樅木がまるで髪をふり乱す恐ろしい女のように枝がしなり、激しく翻弄されている。
「今のうちに、お屋敷に帰ったほうがいいです。送ります」
十市が少し緊張した表情で紳一郎に告げた。
咄嗟に紳一郎は叫ぶ。
「嫌だ。まだ帰りたくない!」
「でも、これ以上雨が激しくなったら吊り橋を渡るのは危なくなります。万が一、雷が落ちたらお屋敷に帰れなくなります」
十市が答えた瞬間、夜空に稲妻が走った。
すぐに窓硝子がびりびりと震えるほどの雷鳴が轟き、思わず十市にしがみついた。
…十市の匂いだ…。安煙草と、南国の熟れた果実のような匂いと…そして…身体が熱くなるような成熟した牡の匂い…!

…いきなり、紳一郎の胸の中から抑えきれない恋心と欲望が溢れ出す。
紳一郎は何もかもかなぐり捨てるかのように十市に叫んだ。
「帰れなくてもいい…!このまま、ここにいたい!…十市といたい…!」
「坊ちゃん…?」
十市の腕の中で紳一郎は彼を食い入るように見上げる。
「…好きだ。十市が好き…」
十市は驚いたようにその黒い瞳を見開いたが、ふっと優しく笑う。
「俺も坊ちゃんが好きですよ」
紳一郎は必死で首を振る。
「そうじゃない!…僕が言っているのは…お前を愛しているということだ。友情じゃない。お前に恋しているんだ…!」
「坊ちゃん…」
十市の身体がびくりと震え、慌てふためいたように紳一郎の腕を離した。
「愛している。十市…。お前が誰よりも好きだ!」
必死に腕にしがみつき食い下がる紳一郎から、十市は苦しげに目を背ける。
「だめだ…坊ちゃん…。そんなこと…言っちゃいけない」
「どうしてだめなの…⁈」
「…あんたは名門貴族の坊ちゃんだ。俺はしがない森番だ」
「そんなの関係ない!」
初めて十市に拒まれた恐怖から紳一郎は男の逞しい胸に離されまいと力を込めて抱きついた。

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