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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る
「身分とかそんなもの関係ない!僕は十市が好き…大好き…愛している…」
切なげに腕を離そうとする十市に紳一郎は身を投げ出さんばかりに掻き口説く。
「十市は…僕が好き…?」
「…好きです。…でも…」
直ぐに肯定してくれる十市が愛おしい。
…けれど十市の表情はこれ以上ないほど苦しげだ。
だから紳一郎は自分の全てを投げ出す。
今の紳一郎全てを投げ出して、それがいくらかでも十市にとって価値あるものであるようにと願いながら…。

紳一郎はその華奢な白い手で十市の精悍で引き締まった貌を引き寄せ、唇を合わせる。
「…好き…大好き…十市…」
「…だめだ…坊ちゃん…」
今まで一度も紳一郎を拒んだことがない十市がその大きな手で苦しそうに紳一郎の手を振りほどく。

逆上に近い感情が紳一郎を襲う。
「…好きなんだ…十市…僕を十市のものにして…!」
再び唇を合わせる。
頑丈な男の身体を抱き寄せ、身体を密着させる。
背伸びをして、尚も唇を奪う。
逃げようとする十市を押さえつけ、唇に噛み付くようにくちづけを繰り返す。
…十市の煙草の匂い…。ややひび割れた精悍な唇…。
十市とくちづけを交わしているという事実だけで、心臓が止まりそうになる。

十市の力で抵抗すれば紳一郎など呆気なく突き放せるはずだ。
しかし十市は紳一郎を傷つけるのを恐れるかのように柔らかく押し返すだけだ。
「…十市…!愛してる…!」
堪え切れなくなった紳一郎がその場に男を押し倒す。
派手な音を立てて、十市が床に倒れ込む。
頑丈な男は眉ひとつ動かさない。
むしろ覆い被さる紳一郎を庇うように抱きしめる。

その優しさにつけ込むように馬乗りになり、貌を近づける。
「…愛してる…。ねえ、して…。僕を奪って…何もかも」
「…だめだ…坊ちゃん…俺は…」
「…僕が好きなら…して…」
…愛していなくていいから…。
少しでも好きならばそれで構わないから…。
「…十市…愛してる…。…僕には…十市しかいないんだ…」
涙が滲む声を聞いた刹那、十市は一度ぎゅっと瞼を閉じ大きく息を吐く。
…そして覚悟を決めたかのようにゆっくりと見開く。
暗い黒い瞳の奥には、紳一郎が初めて見る野生の欲望の熱い炎が灯っていた。




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