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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る
「…十市と…僕が…兄弟…?」
口に出しても全く実感がない。
震える声で尋ねる。
「…十市は…そのことを知っているの…?」
蕗子はほっそりとした首を傾げ、あっさりと答えた。
「さあ、分からないわ。私は十市と話したことは殆どないし、あの男は恐ろしく無口だしね」
…自分が異母兄弟と知って、僕を抱いたのだとしたら…十市には何か思惑があったのだろうか…。
疑心暗鬼になっている紳一郎の耳に、魔女の毒な囁きが滑り込む。

「…十市とは蘭子さんが親しかったようね?…蘭子さんに聞いてみたらどうかしら?」
冷水を浴びせられたような衝撃が走り、紳一郎は椅子から立ち上がる。
…蘭子…母様…
そうだ…。
母様はいつも十市に纏わり付いていた…。
ベタベタと…キスをしたり…まるで…まるで、愛人のように…。
…愛人…愛人…
…まさか…‼︎

紳一郎は蒼白な貌のまま、蕗子に何も告げずに足早に部屋を後にした。

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