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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る
殺気立った面持ちで廊下を足早に歩き、大階段を駆け上がる。
血の色の天鵞絨の絨毯を踏みしめながら、母の娘時代の部屋に向かう。
年配の家政婦が慌てて止めようとする。
「紳一郎様、いけません!…今、お嬢様は…」
「どいて。母様が誰と寝てようと今更驚きはしないさ」
家政婦を押しのけ、ノックもせずに重厚な扉を押し開ける。
…蘭子は窓際の革張りのソファーの上で混血の美男の下僕と濃厚なくちづけを交わしている最中であった。
黒いレースのランジェリーは半ば脱がされ、しどけなくも淫蕩な姿を惜しげもなく晒していた。
下僕の手が蘭子の白くたわわな乳房を揉みしだく。
「…んんっ…は…あ…っ…ん…」
蘭子は甘く掠れた喘ぎ声を上げる。
紳一郎は端正な貌を僅かにも揺るがせず、温度のない声で話しかける。
「母様。お話があります」
下僕がぎょっとしたように驚き、慌てて蘭子から離れる。
蘭子は少しも動じずに、靄がかかったように淫蕩な眼差しを紳一郎に向ける。
「…なあに?紳一郎さん」
紳一郎は冷静に蘭子を見下ろす。
…白い肌は男との情事で薄桃色に染まり、艶やかに匂い立つようだ。
ミルクのように白く柔らかそうな乳房…、細く引き締まった腰、まろやかな尻、スリットの入ったランジェリーから覗く肉惑的なきめ細かな太腿…。
紳一郎に良く似た黒い瞳は潤み、頬は咲き始めた薔薇のようにうっすらと朱に染まっていた。
男との淫らくちづけで濡れそぼる紅い唇…。
…最低の母親だ。
淫らで、常識や倫理観の欠片もない、最低の母親…。
…だが、呆れ返るほどに妖艶で美しい…。
男なら誰しもが蘭子を組み伏せ、我が物にしたいと欲望を滾らせるであろう肉体を持った魔性の女だ。
…それは…十市も例外ではないのではないか…。
下僕がバツが悪そうにそそくさと部屋を逃げ出すのを毛筋ほどにも気にせず、紳一郎は尋ねた。
「…僕の父親は誰ですか…」
「…え?」
蘭子は気怠げに美しい眉を上げた。
「…僕の本当の父親は誰ですか…?…本当は…十市なんじゃないですか⁈」
思わず詰問調に問い詰める紳一郎を蘭子はまじまじと見つめ、やがておかしなコメディでも見たときのように笑いだした。
一頻り笑いおさめると退屈そうな眼差しになり、さもないことのように言い捨てる。
「…忘れたわ。そんな昔のこと…貴方の父親が誰かだなんて、どうでも良いことですもの」
血の色の天鵞絨の絨毯を踏みしめながら、母の娘時代の部屋に向かう。
年配の家政婦が慌てて止めようとする。
「紳一郎様、いけません!…今、お嬢様は…」
「どいて。母様が誰と寝てようと今更驚きはしないさ」
家政婦を押しのけ、ノックもせずに重厚な扉を押し開ける。
…蘭子は窓際の革張りのソファーの上で混血の美男の下僕と濃厚なくちづけを交わしている最中であった。
黒いレースのランジェリーは半ば脱がされ、しどけなくも淫蕩な姿を惜しげもなく晒していた。
下僕の手が蘭子の白くたわわな乳房を揉みしだく。
「…んんっ…は…あ…っ…ん…」
蘭子は甘く掠れた喘ぎ声を上げる。
紳一郎は端正な貌を僅かにも揺るがせず、温度のない声で話しかける。
「母様。お話があります」
下僕がぎょっとしたように驚き、慌てて蘭子から離れる。
蘭子は少しも動じずに、靄がかかったように淫蕩な眼差しを紳一郎に向ける。
「…なあに?紳一郎さん」
紳一郎は冷静に蘭子を見下ろす。
…白い肌は男との情事で薄桃色に染まり、艶やかに匂い立つようだ。
ミルクのように白く柔らかそうな乳房…、細く引き締まった腰、まろやかな尻、スリットの入ったランジェリーから覗く肉惑的なきめ細かな太腿…。
紳一郎に良く似た黒い瞳は潤み、頬は咲き始めた薔薇のようにうっすらと朱に染まっていた。
男との淫らくちづけで濡れそぼる紅い唇…。
…最低の母親だ。
淫らで、常識や倫理観の欠片もない、最低の母親…。
…だが、呆れ返るほどに妖艶で美しい…。
男なら誰しもが蘭子を組み伏せ、我が物にしたいと欲望を滾らせるであろう肉体を持った魔性の女だ。
…それは…十市も例外ではないのではないか…。
下僕がバツが悪そうにそそくさと部屋を逃げ出すのを毛筋ほどにも気にせず、紳一郎は尋ねた。
「…僕の父親は誰ですか…」
「…え?」
蘭子は気怠げに美しい眉を上げた。
「…僕の本当の父親は誰ですか…?…本当は…十市なんじゃないですか⁈」
思わず詰問調に問い詰める紳一郎を蘭子はまじまじと見つめ、やがておかしなコメディでも見たときのように笑いだした。
一頻り笑いおさめると退屈そうな眼差しになり、さもないことのように言い捨てる。
「…忘れたわ。そんな昔のこと…貴方の父親が誰かだなんて、どうでも良いことですもの」