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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る
…それからの紳一郎は正に生きる屍であった。
屍というのが大袈裟ならば、仮面を被り続けた日々であった。
仮面は余りにぴったりと紳一郎の貌に寄り添い、まるでそれが素顔であるかのように、本人ですら感じるほどであった。
…常に穏やかで朗らかで人に優しく、文武両道に努力し、学業はもちろん学院の生徒会活動にも部活動にも積極的に参加し上級生、下級生、同級生、そして教師たちの信頼も勝ち得、誰からも好かれる学生であり続けた。
社交界にも積極的に貌を出し、名門華族 鷹司家の美しく賢く模範的な貴公子と呼ばれるようになった。

紳一郎の天性の美貌も相まって、紳一郎を慕い…果ては恋する者もあまた現れた。
恋愛もどきの体験もした。
何かに夢中になる振りをしないと、生きている実感が湧かずに怖かったからだ。
けれど、最後の一線は超える気にならなかった。
越えられなかった。
十市を愛していたからだ。
十市を忘れられなかったからだ。

だが十市のことはずっと胸に秘め、硬く封印し続けた。
屋敷内でも十市のことは禁句となった。

…封印が解かれたのは、あの夏の…軽井沢の嵐の夜…。
星南学院馬術部の後輩、縣 薫と大紋暁人に紳一郎の胸の内を図らずも暴かれてしまった夜からだった。

…そして、あの指輪の文字を見た日から…。

紳一郎は再び、十市のことを想い始めたのだ。
…苦しい…しかし唯一無二の切ない初恋に還るかのように…。
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