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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
「風間先輩はお元気かな?…百合子さんと、瑠璃子ちゃんも…。またお会いしたいな」
暁はしみじみしたように呟く。
司は優雅な仕草で熱いクリームティーのカップを口に運ぶ。
「父は相変わらず多忙です。パリのオテル・カザマも順調なようで、ニースにも進出する計画があるようです。母は子ども服の店が成功して、そちらも二号店をこの秋に13区にオープンしました。瑠璃子は…僕が日本に行く時大層泣いて…困りました」
瑠璃子は7才になったばかりだ。
恥ずかしがり屋で大人しいこの少女は大好きな兄が日本に渡るのを心底寂しがり、別れの日は可愛らしい貌を涙で濡らし、司に抱きついたままずっと離れようとしなかった。
司の胸は痛んだ。
瑠璃子と自分は半分しか血は繋がっていない。
司の父は忍の亡くなった兄で、瑠璃子はフランスに渡ったのち、忍と百合子の間にようやく出来た待望の娘だった。
実の子どもの瑠璃子が生まれても、忍はそれまでと変わらずに司を我が子同然に可愛がってくれている。
司は幼い頃から忍を慕っていたし、今も大好きだ。
だから瑠璃子が生まれたことは、司にとっても最大の喜びだった。
どこにでも着いてくる小さな妹を、司は誰よりも可愛がった。
最愛の妹を残して日本に行くことが一番の気がかりだった。
「…まあ、可愛いこと。お兄様が大好きなのね」
光が感心する。
光の隣に座っている可愛らしい幼女が、無邪気に司に笑いかけた。
「すみれもおにいちゃまがすき。でも、すみれのりぼんをひっぱったり、すみれのチョコレートをたべちゃうところはきらい」
屈託無い言葉に一同がどっと笑い転げる。
礼也の隣に座っている少年が唇をへの字に曲げて肩を竦めてみせる。
「告げ口するなよな、ブス!」
菫の貌が見る見る間にかき曇り、泣きじゃくる。
光が美しい貌を顰めて容赦なく叱る。
「薫!何てことを言うの!」
「ブスだからブスって言ったんだよ」
薫は頗る美少年なのに口が悪いようだ。
「すみれ、ブスじゃないもん!おにいちゃまのバカ!」
礼也が大らかに笑いながら菫を抱き上げる。
「菫は飛び切りの美人だよ。お母様にそっくりだ。菫はお父様のお姫様だからな。さあ、泣くのはおよし」
そして司に優しく笑いかける。
「子どもが小さいから騒がしくてすまないね。君もここは我が家だと思って、気兼ねなく過ごしてくれ給え」
暁はしみじみしたように呟く。
司は優雅な仕草で熱いクリームティーのカップを口に運ぶ。
「父は相変わらず多忙です。パリのオテル・カザマも順調なようで、ニースにも進出する計画があるようです。母は子ども服の店が成功して、そちらも二号店をこの秋に13区にオープンしました。瑠璃子は…僕が日本に行く時大層泣いて…困りました」
瑠璃子は7才になったばかりだ。
恥ずかしがり屋で大人しいこの少女は大好きな兄が日本に渡るのを心底寂しがり、別れの日は可愛らしい貌を涙で濡らし、司に抱きついたままずっと離れようとしなかった。
司の胸は痛んだ。
瑠璃子と自分は半分しか血は繋がっていない。
司の父は忍の亡くなった兄で、瑠璃子はフランスに渡ったのち、忍と百合子の間にようやく出来た待望の娘だった。
実の子どもの瑠璃子が生まれても、忍はそれまでと変わらずに司を我が子同然に可愛がってくれている。
司は幼い頃から忍を慕っていたし、今も大好きだ。
だから瑠璃子が生まれたことは、司にとっても最大の喜びだった。
どこにでも着いてくる小さな妹を、司は誰よりも可愛がった。
最愛の妹を残して日本に行くことが一番の気がかりだった。
「…まあ、可愛いこと。お兄様が大好きなのね」
光が感心する。
光の隣に座っている可愛らしい幼女が、無邪気に司に笑いかけた。
「すみれもおにいちゃまがすき。でも、すみれのりぼんをひっぱったり、すみれのチョコレートをたべちゃうところはきらい」
屈託無い言葉に一同がどっと笑い転げる。
礼也の隣に座っている少年が唇をへの字に曲げて肩を竦めてみせる。
「告げ口するなよな、ブス!」
菫の貌が見る見る間にかき曇り、泣きじゃくる。
光が美しい貌を顰めて容赦なく叱る。
「薫!何てことを言うの!」
「ブスだからブスって言ったんだよ」
薫は頗る美少年なのに口が悪いようだ。
「すみれ、ブスじゃないもん!おにいちゃまのバカ!」
礼也が大らかに笑いながら菫を抱き上げる。
「菫は飛び切りの美人だよ。お母様にそっくりだ。菫はお父様のお姫様だからな。さあ、泣くのはおよし」
そして司に優しく笑いかける。
「子どもが小さいから騒がしくてすまないね。君もここは我が家だと思って、気兼ねなく過ごしてくれ給え」