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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
「わあ!…ここが本郷かあ…」
司は狭い道を授業が終わったばかりの学生が賑やかに通り過ぎる坂道を目を輝かせながら歩く。
「ここは日本のカルチェラタンだね!学生ばかりだ。あの店はカフェかな?」
「…いえ、団子屋です」
「へえ!だんごや…」
子どものように店のガラス戸に貌を押し当てる司を、泉は戸惑ったように眺める。


…午後の銀器のチェックがあるから道案内はできないと断った泉を尻目に、司は素早く光に談判に出掛けた。
…結果は…。

「泉、ぜひとも司さんのお供をして差し上げてちょうだい。初めての東京なのよ。迷子になったらお可哀想だわ」
光がわざわざ階下にまで降りて来て命じたのだ。
「お言葉ですが、奥様。私でなくとも他の下僕でも…」
東京育ちの下僕は何人もいる。
自分でなくてはならないことはないはずだ。

光は美しい睫毛を瞬かせ、笑う。
「貴方がいいんですって。あっと言う間に懐かれたわね。ではお願いね、泉」
「…はあ…」
「晩餐までには帰ってね。今夜は司さんの歓迎会を開くのだから…暁さんや大紋様ご夫妻や北白川の綾香様と梨央様もお招きしたの。…そうだわ。ヴーヴ・クリコを出してもらうように生田におねだりしてこよう」
パーティ好きの光はうきうきとしている。
「…かしこまりました。奥様」
奥様の命令なら仕方ない。
泉は後のことを下僕長に頼み、外出の支度をしたのだった。


「…あの…、風間様」
「司と呼んでくれ。…なに?泉」
前を上機嫌で歩く司に遠慮勝ちに声をかける。
「…司様の留学された大学は…上智ですよね?」
「うん。そうだよ」
「…ここは…このまま行くと帝大に着くのですが…」
「うん。そう。帝大に行きたいんだ」
「…はあ…」
帝大の赤門を潜ると、司は急にそわそわしだした。
泉の袖を引き、小声で尋ねる。
「…ちょっと…泉。…医学部はどこかな?」
「医学部?医学部にご用なのですか?」
「…う、うん…」
もじもじしだした司を不審に思いながら、標識を見ながら医学部の棟へと進む。

すっかり葉を落とした銀杏並木の道を越えると赤煉瓦の建物が見えてきた。
「あれが医学部の棟みたいですよ」
指を指すと、司は真剣な表情で渡り廊下を談笑しながら歩く医学生の群れをじっと見つめた。
…知り合いでも探しているのかな。
そう思った時…。
司があっと叫ぶといきなり脱兎のごとく駆け出した。
「真紀‼︎」

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