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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
司はぐいぐいと手を引っ張り構内を早足で歩く真紀…新條真紀におずおずと話しかける。
「真紀、怒っているの?いきなり来たから…」
「別に。怒ってないけど…。…お前、時と場所を考えろよな」
真紀は振り返ってもくれない。
相変わらずぶっきらぼうな声色だ。
「…やっぱり怒っている…真紀…」
「怒ってないって‼︎」
びくりと司が怯えたように肩を竦める。
真紀は溜息をつき、頭を掻く。
今度は優しく校舎の陰に司を導く。
「…ごめん。大きな声を出して…。悪かったよ」
「…ううん…。僕が急に来たから…」
にこにこと無邪気な笑みを浮かべる司に、真紀はバツが悪そうに小さく笑う。
「…驚いたよ。まさか大学の構内に司がいるなんて…。…どうしたの?里帰り?」
相変わらず司は幸せそうに首を振る。
「違う。僕、ソルボンヌは休学して日本の大学に留学したんだ。…真紀みたいには頭が良くないから…帝大は無理だったんだけど…。四谷にある上智。お父様の友人の縣男爵の屋敷にホームステイするんだ。…だからこれからは毎日会えるよ!」
真紀は眼を見張る。
戸惑ったように尋ねる。
「…まさか、俺に会うために?」
「そうだよ、もちろん!…会いたかったよ、司!…会えない間、寂しくて死にそうだった。急に日本に帰国しちゃうんだもん」
真紀は溜息を吐き、やや不機嫌そうに答えた。
「仕方ないだろう。実家からの仕送りがなくなったんだ。親父が株で大損して、俺を海外の大学に通わせ続ける余裕はなくなったのさ。帝大は奨学金で通っているんだ。…ブルジョアなお前みたいにお気楽な身分じゃないんだ」
「…真紀…」
しゅんと貌を曇らせた司を見て、真紀は再び眼を閉じ詫びる。
「…ごめん。こんなこと、言うつもりじゃなかった…。…俺もお前に会えて嬉しいんだ…嬉しいんだけど…」
司は優しく微笑みかける。
「いいんだ。真紀は偉いよ。1人で自立して…。かっこいい…。…大好きだよ、真紀…」
堪らずに司の白く透き通るような貌を引き寄せる。
「…俺だって…大好きだよ…司…」
けぶるような長い睫毛…美しい薄茶色の瞳…薄紅の唇…。
真紀はそのまま司を抱きしめるとその唇を奪う。
「…あ…っ…まさ…き…」
甘く掠れた声はそのまま真紀のやや荒々しいくちづけに溶け込む。
…久しぶりの恋人との再会のくちづけに、司は身を委ね酔い痴れた。


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