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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
「…私、予々思案していたのだけれど…そろそろこのテーブルにも正式に着いていただいて良い方がいらっしゃるのではないかしら…?」
意味深な光の言葉に、北白川伯爵の二人の令嬢たちがきらきらと瞳を輝かせた。
「まあ、光さん」
「そうですわよね。確かに…」
温かい笑みが漏れる。

「…礼也さん。そろそろ月城も晩餐に招いても良い頃ではないかしら?」
「…義姉さん。…その話は…」
暁が慌てて光を止めようとする。
大紋夫妻はともかく、薫や暁人…そして今日日本に来たばかりの司には寝耳に水の刺激の強い話題だと思ったからだ。
しかし光は物柔らかな言い方ではあるが、一歩も引かない決意のようなものを漂わせ、続けた。
「暁さん。貴方は随分長い間我慢なさっているわ。もうそろそろ私たちは、ありのままのお二人の関係を受け入れて、それを内輪では公にする準備をしなくてはならない頃だと思うの。
…司さん、司さんにはこれから家族のように私たちと共に生活していただくつもりなの。ですから暁さんのことも包み隠さずにお話するわね」

司はやや驚いた表情をしたが、すぐに真剣な表情で頷いた。
「礼也さん。よろしいわよね?ご説明しても」
礼也は妻の決意に心を動かされた様子で、黙って頷いた。
「…暁さんは、こちらの北白川伯爵家の執事、月城と生涯を誓い合った仲でいらっしゃるの」

薫と暁人は視線を合わせ、目で頷いた。
絢子ははっと驚いたように息を呑み、そして傍らの夫、大紋をおずおずと見上げた。
大紋は穏やかな笑みを浮かべ、絢子の手を軽く握った。

「私は大切な義弟の暁さんが、私たちと同じようにパートナーを伴って一緒にお食事したり、語らったりする機会が欲しいの。…例えば大きな行事の時とか…。そうね、今年のクリスマスイブの晩餐はぜひとも月城を招待したいの。
…暁さんのパートナーは私たちにとっても家族ですもの」
暁は胸が一杯になり、言葉を詰まらせる。
「…義姉さん…」

礼也が大きく息を吐く。
「私は駄目だな。…月城に暁を取られてしまった思いが強くて…暁の気持ちを慮ってやれなかった。
…光さん、君を誇りに思うよ」
妻の白い手を握りしめる。
そして
「暁。…すまなかったね」
暁は首を振る。
「いいえ、いいんです。兄さん…」
礼也が優しく告げた。
「今年のイブの晩餐は、必ず2人で出席してくれ…」
暁の白い頬に、喜びの涙が流れた。


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