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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
晩餐の後、薫は暁人と秘密の小部屋に引き篭ると、こっそりくすねてきたウィスキーボンボンを二人で分け、口に運ぶ。
ウィスキーボンボンは子どもは駄目と禁止されているのだ。
足元に座り、嬉しそうに尻尾を振るカイザーにはスペアリブの骨を振るまってやる。
「…暁叔父様、やっぱりそうだったんだ。…あの指輪…。つまりは…」
「…結婚した…てことだよね」
暁人は珍しくやや興奮したように囁いた。
そして熱い眼差しで薫を見つめる。
秘密の小部屋は四畳半もない狭い部屋だ。
納戸のような部屋で普段使わない椅子や机などが仕舞われ白いリネンが掛けられているのだ。
やや埃っぽい匂いの中、暁人のシャツのシャボンの香りが混ざる。
「…いいな。…僕も、薫と結婚したいな…いつか…」
暁人が熱に浮かされたように囁くと、薫の小さな貌を引き寄せようとする。
「バカ!何が結婚だ。ふざけるな。僕はお前と結婚する気はこれっぽっちもないからな」
けんもほろろに頭を叩かれ、暁人はしゅんとする。
…軽井沢ではキスとお互いの身体を触りあい、精を放つことまで許してくれたのに、薫は最近全く隙がない。
身体を許すどころか、キスも許してくれないのだ。
「…なんで?僕は薫が大好きだよ。愛している。薫を恋人にしたい」
薫より遥かに逞しい腕で引き寄せられる。
睨みつけて突き飛ばす。
「…言っただろ?僕は泉が好きなんだって」
暁人は切なげに眼を瞬かせる。
「…でも…泉は…薫のこと、好きなのかな…」
「…え?」
薫が怪訝そうに眉を顰めた時、廊下を挟んだ小客間から囁くような人の声が聞こえた。
薫は暁人に人差し指を立てると、そっと扉に近づいた。



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