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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
「…今夜の晩餐は、ドラマチックだったなあ」
ナイトキャップのホットワインを持って来た泉は、暖炉の前の椅子に優雅に座り、うっとり夢見るような眼差しをした司に目を遣る。
白いシルクのパジャマにミルクティー色の温かそうなガウンを着た司は異国の王子めいた美しさを醸し出していて思わず見惚れる。
…司様は貴族のお家柄ではないけれど、誰よりも優雅な貴族の雰囲気をお持ちになった方だな…。
外国で異国文化に触れて育たれるとこんな風に西洋絵画から抜け出て来たような青年に成長されるのだろうか…。
暖炉の炎の橙色が映り込んだ大きな瞳で泉を見上げる。
…綺麗な青年だな…。
素直に感動する。
少しも好みではないが。
泉が好きなタイプは美しいが控えめでどこか儚げで…寂しげな風情を漂わせた夜に咲く白い花のようなひとなのだ…。
「縣家はフランス並みに最先端だね。暁さんと君の兄さんとの結婚を正式に認めて、受け入れるのだからね」
司の眼差しが悪戯っぽい笑みで泉を見る。
泉は咳払いをする。
「私の兄と…よく気付かれましたね…」
「ファミリーネームが一緒だし…さっき玄関で垣間見たけれど君と貌立ちが似ていたからね。二人ともハンサムだ」
にっこり笑い、泉から受け取ったホットワインを一口飲む。
「似ているけれど、正反対のタイプだな。兄さんはクールビューティーでエレガントだけど、君はどちらかと言うとワイルドでカジュアルだ」
18歳の若僧に言われたくはない。
泉は、ややむっとしながらも儀礼的な微笑は浮かべてみせる。
「…私はまだ兄と違い若輩者ですから…」
「副執事だよね?でも僕は君みたいにざっくばらんに話せる執事が好きだよ」
「…それはどうも…」
無邪気な司に、ふと昼間の件を聞いてみる気になった。
気を使っているのが馬鹿馬鹿しくなるほど彼には垣根がないからだ。
「司様。お伺いしても宜しいですか?」
「うん?」
「昼間のあの帝大医学部の方は…」
ああ…と司は嬉しそうに頬を染めた。
「僕の恋人」
「へ⁈」
「僕の恋人。コレージュ…中学の時から僕の家庭教師をしてくれていた人。ソルボンヌの留学生だったんだ」
「…家庭教師…」
「うん。付き合い出したのはリセに入ってからだけどね」
白い頬を薔薇色に染めながら楽しげに告白する司に泉は茫然としつつ、苛々と苛立つ胸の内を感じていた。
…乱れている…!実に乱れすぎている!
ナイトキャップのホットワインを持って来た泉は、暖炉の前の椅子に優雅に座り、うっとり夢見るような眼差しをした司に目を遣る。
白いシルクのパジャマにミルクティー色の温かそうなガウンを着た司は異国の王子めいた美しさを醸し出していて思わず見惚れる。
…司様は貴族のお家柄ではないけれど、誰よりも優雅な貴族の雰囲気をお持ちになった方だな…。
外国で異国文化に触れて育たれるとこんな風に西洋絵画から抜け出て来たような青年に成長されるのだろうか…。
暖炉の炎の橙色が映り込んだ大きな瞳で泉を見上げる。
…綺麗な青年だな…。
素直に感動する。
少しも好みではないが。
泉が好きなタイプは美しいが控えめでどこか儚げで…寂しげな風情を漂わせた夜に咲く白い花のようなひとなのだ…。
「縣家はフランス並みに最先端だね。暁さんと君の兄さんとの結婚を正式に認めて、受け入れるのだからね」
司の眼差しが悪戯っぽい笑みで泉を見る。
泉は咳払いをする。
「私の兄と…よく気付かれましたね…」
「ファミリーネームが一緒だし…さっき玄関で垣間見たけれど君と貌立ちが似ていたからね。二人ともハンサムだ」
にっこり笑い、泉から受け取ったホットワインを一口飲む。
「似ているけれど、正反対のタイプだな。兄さんはクールビューティーでエレガントだけど、君はどちらかと言うとワイルドでカジュアルだ」
18歳の若僧に言われたくはない。
泉は、ややむっとしながらも儀礼的な微笑は浮かべてみせる。
「…私はまだ兄と違い若輩者ですから…」
「副執事だよね?でも僕は君みたいにざっくばらんに話せる執事が好きだよ」
「…それはどうも…」
無邪気な司に、ふと昼間の件を聞いてみる気になった。
気を使っているのが馬鹿馬鹿しくなるほど彼には垣根がないからだ。
「司様。お伺いしても宜しいですか?」
「うん?」
「昼間のあの帝大医学部の方は…」
ああ…と司は嬉しそうに頬を染めた。
「僕の恋人」
「へ⁈」
「僕の恋人。コレージュ…中学の時から僕の家庭教師をしてくれていた人。ソルボンヌの留学生だったんだ」
「…家庭教師…」
「うん。付き合い出したのはリセに入ってからだけどね」
白い頬を薔薇色に染めながら楽しげに告白する司に泉は茫然としつつ、苛々と苛立つ胸の内を感じていた。
…乱れている…!実に乱れすぎている!