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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
真紀の愛撫と性交は相変わらず巧みで情熱的だった。
丹念に…そして淫らに司の身体を愛し、奪い、容赦なく司の中に熱い精を放った。
以前と変わらない快楽を与えられ、司は真紀の腕の中で細かく痙攣しながら達した。
そんな司を真紀は優しく抱きしめてくれ、キスを繰り返してくれた。

…司の初体験の相手は真紀だ。
まだ女も男も、性については無知な司の身体を優しく…しかし躊躇いなく奪い、男を受け入れることを覚えさせられたのも真紀によってだった。

14の年に家庭教師として風間家に来た真紀と知り合い、恋心を覚えたのは司の方だった。
元々父親の忍が大好きな司は、年上の男性に憧れる傾向があった。
5歳からフランスに渡り成長した司だが、フランス人に囲まれて生活していても、心惹かれるのはやはり日本人であった。

真紀は当時19歳で、冷たい印象を与えるほど整った容姿をした大人びた医学生だった。
屈託のない司は初めて風間家に来た真紀に無邪気に話しかけた。
「真紀先生はドクターになるの?」
「…そうだね。なれるように努力しているところだよ」
穏やかに答える真紀に、司は貌を寄せてまじまじと見つめる。
「僕、ドクター嫌い。注射、痛いんだもん。よくドクターになろうなんて思うよね」

真紀に温かいクリームティーを勧めながら、母親の百合子が困ったように窘める。
「司、新條先生に失礼ですよ。
…申し訳ありません。一人っ子の時期が長くて、少し甘やかしすぎました。…お勉強も好きなことしか致しませんので、数学が赤点ばかりで…。来年の卒業試験も厳しいかも知れないとコレージュの先生に釘を刺されましたの。リセ・ルイ=ル=グランに進学を希望しているのですが…今のままでは推薦も覚束ないと…」
「嫌だよ。ヴィクトールやシモン達と一緒の学校に行きたいもん!」
百合子が眉を顰める。
「だから、きちんとお勉強しないと駄目でしょう。…本当に我儘で…困ってしまいます」

真紀はふっと笑うと、司を見つめた。
「司くん。僕も数学は苦手だったんだよ」
「本当?」
半信半疑の眼差しを向ける。
「うん。…数学を好きになる魔法があるのさ」
「魔法⁈」
司が薄茶色の瞳を見開く。
とても綺麗な子だな…と真紀は思った。
「その魔法を司くんにだけ教えようかな」
「知りたい!教えて!」
その日から真紀はほぼ毎日、司に数学を教えるようになったのだ。






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