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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
…あの頃が一番幸せだったな…。
真紀の腕の中で、司はぼんやりと考える。
…リセに入って正式に付き合いが始まったけれど、二年もしない内に真紀は実家の没落が元で、ソルボンヌを退学し、日本へ帰国…。

…今も真紀は優しいけれど…。
…でも…どこか変わってしまったような気がするのは、考えすぎなのだろうか…。

真紀はくしゃくしゃと司の髪を撫でると寝台から起き上がった。
「…起きるの?」
すらりとした美しい背中を見せながら、素早くシャツを羽織る。
「ベッド、狭いだろう?」
「そんなの、気にしないよ」
…もっと真紀と一緒にいたい。
まだ、話もゆっくりしていない。

手際よく服を着ると、真紀は爽やかに笑った。
「お腹すいただろう?…近くに美味くて安い定食屋があるんだ。とんかつを食べに行こう。ご馳走するよ」
「定食屋てなに?」
「う〜ん。ビストロ…てとこかな」
「…へえ…。ねえ、とんかつてなに?」
「…そうだなあ。ポークシュニッツェル…て感じかな。でも、日本のとんかつの方が美味いぞ?」
真紀は笑うと冷たい印象を与える美貌が和らぎ、温かい雰囲気に包まれる。
司は嬉しくなって寝台から起き上がる。
「食べたい!お腹空いた!」
真紀はウィンクしてタオルを投げる。
「じゃあ、シャワーを浴びておいで。10分で支度だ。急げよ」

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