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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
司は晩餐前に漸く大層疲れた様子で帰宅した。
泉が晴れやかな笑顔で玄関ホールに迎えに出る。
「お帰りなさいませ。司様」
声をかけると、司はなぜかギョッとしたように振り返った。
「あ、た、ただいま…」
「随分、遅かったですね。…タクシーで帰られたのですか?」
車寄せからタクシーが走り去るのをちらりと見ながら泉が尋ねる。
「う、うん。…高輪の祖父母の家に寄ったから…」
泉は男らしく整った貌に人好きのする笑みを浮かべる。
「それはそれは…。風間様は大層お喜びになられたことでしょう」
司はぎこちなく笑い返しながらそそくさと大階段を昇ろうとする。
「…う、うん。喜んでくれたよ…」
「もう少しで晩餐のお時間です。お召替えをお手伝いいたします」
「え?…い、いいよ…」
司のあとを付き従う泉に慌てて振り返った弾みに、脚が縺れ、バランスを崩す。
「…あっ…‼︎」
「危ない…!」
咄嗟に泉が司を抱き止める。
司のほっそりとした身体が泉の逞しい腕の中で抱きしめられる。
「…あ…」
二人の眼差しが至近距離で合う。
同時にぎこちなく視線を外す。
「…失礼いたしました」
「…う、ううん。ありがとう…」
…ふと、司の透き通るように白く細い首筋が目に入った。
…新雪のように白いうなじにまるで紅梅のような鮮やかな小さな噛み跡…。
「……」
泉は思わず眉を顰めた。
それには気付かずに司は明るい声で話しながら大階段を昇る。
「着替えは一人で出来るよ。大丈夫。…ありがとう」
「…かしこまりました。それでは後ほど、お部屋にお迎えに参ります」
「…うん」
…ほっそりとした美しい後ろ姿はどこか頼りなげに寂しげに見えた。
泉は司が部屋に入るのを暫く見送ると小さく息を吐き、やがてダイニングルームの最終チェックをするべく階段を駆け下りたのだった。
泉が晴れやかな笑顔で玄関ホールに迎えに出る。
「お帰りなさいませ。司様」
声をかけると、司はなぜかギョッとしたように振り返った。
「あ、た、ただいま…」
「随分、遅かったですね。…タクシーで帰られたのですか?」
車寄せからタクシーが走り去るのをちらりと見ながら泉が尋ねる。
「う、うん。…高輪の祖父母の家に寄ったから…」
泉は男らしく整った貌に人好きのする笑みを浮かべる。
「それはそれは…。風間様は大層お喜びになられたことでしょう」
司はぎこちなく笑い返しながらそそくさと大階段を昇ろうとする。
「…う、うん。喜んでくれたよ…」
「もう少しで晩餐のお時間です。お召替えをお手伝いいたします」
「え?…い、いいよ…」
司のあとを付き従う泉に慌てて振り返った弾みに、脚が縺れ、バランスを崩す。
「…あっ…‼︎」
「危ない…!」
咄嗟に泉が司を抱き止める。
司のほっそりとした身体が泉の逞しい腕の中で抱きしめられる。
「…あ…」
二人の眼差しが至近距離で合う。
同時にぎこちなく視線を外す。
「…失礼いたしました」
「…う、ううん。ありがとう…」
…ふと、司の透き通るように白く細い首筋が目に入った。
…新雪のように白いうなじにまるで紅梅のような鮮やかな小さな噛み跡…。
「……」
泉は思わず眉を顰めた。
それには気付かずに司は明るい声で話しながら大階段を昇る。
「着替えは一人で出来るよ。大丈夫。…ありがとう」
「…かしこまりました。それでは後ほど、お部屋にお迎えに参ります」
「…うん」
…ほっそりとした美しい後ろ姿はどこか頼りなげに寂しげに見えた。
泉は司が部屋に入るのを暫く見送ると小さく息を吐き、やがてダイニングルームの最終チェックをするべく階段を駆け下りたのだった。