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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
タクシーから降り、司はそっと玄関の扉を押す。
がらんとした玄関ホールにシャンデリアの灯りだけが灯っている。
…幸い使用人は誰もいないようだ。
司はほっと胸を撫で下ろす。

そのまま扉を静かに閉めていると、背後から爽やかな声がなめらかに響いた。
「お帰りなさいませ。司様」
「わっ…‼︎」
飛び上がるほど吃驚する。
振り返ると、精悍でハンサムな貌に完璧な笑顔を浮かべた泉が驚くほどに近い距離で佇んでいた。

「…た、ただいま…」
「今日も遅かったですね。どちらに行かれていたのですか?」
さりげなく歩き出し、素っ気なく答える。
「…高輪の祖父母の家だよ。また会いたいって連絡が来たから…」
司の背後から付き従いながら、泉が不思議そうに呟く。
「…そうですか…。おかしいですねえ…。先ほど高輪の風間様よりお電話があったのですが…。
…司様がまだ一度も貌を見せてくれないから、早く会いに来てくれるようにと仰っておいででしたよ…」
ギクリと脚を止める司の前にゆっくりと歩み出る。
「…たまたま電話に出たのが私で、奥様がおられなかったのでご伝言を承りましたから良かったですが…」
俯く司に、静かだがきっぱりとした声が掛かる。
「…司様のお部屋で、ゆっくりお話を伺えますか?」
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