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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
モロッコ革の紅色のソファにやや硬くなりながら座っていると、泉が良い香りのする飲み物を盆に載せ、部屋に入ってきた。
「どうぞ。お身体が暖まりますよ」
柔かな笑顔で差し出されたカップは温かく、ミルクと紅茶とスパイシーな香りに満ちていた。
一口飲むと、強張っていた身体からふっと力が抜けるような気がした。
甘いミルクティーの中にピリッとした香りの良いスパイスが入っている。
じんわりと身体の中が温まる。
「…これ、なに?すごく美味しい…」
飲んだことのない飲み物だった。
「チャイです。…インドのクリームティーみたいなものですね。ピリッとするのは生姜です」
「生姜?」
「ジンジャーですよ」
「ああ、ジンジャー!…甘くてすごく美味しい…」
司の子どものような無邪気な笑顔を受け、泉は少しどきりとした。

小さく咳払いをし、口を開く。
「…お召し上がりになりながらで結構です。ご説明いただけますか?…この数日、大学にも行かれずにどちらに行かれているのかを…」
カップを握る白い手に力が入る。
俯いたまま小さな声が響いた。
「…大学は…行ってるよ…」
「先ほど確認いたしました。司様はまだ一度も大学にいらしていないと担当教授が心配しておられました」
びくりと華奢な肩が震える。
「運転手の前田さんにも尋ねました。
…司様はずっと帝大に行くようにご命じになると。…それから…このことは私には内緒だと仰ったそうですね」
「…それは…」
「…あの恋人の医学生に会いに行かれているのですね?」
はっと息を飲み、貌を上げる。
泉の澄んだ黒い瞳が厳しい光を帯びて司を見つめていた。
「…なぜ嘘をつかれるのですか?」
「…そ、それは…」
「疚しいことがあるからではありませんか?」
「そんなことない!…ただ、真紀に会いたいから会いに行っているだけだ!」
泉がつかつかと司に近寄り、その長い指で司の白くほっそりとしたうなじを撫で上げた。
「な、なにをする…」
驚いて、泉の手を払う司に淡々と指摘する。
「…綺麗な首筋にキスマークがついていますよ」
慌ててうなじをシャツの襟で隠す。
「…こんな…淫らな情事の痕をあからさまに恋人に付けて帰すなんて…無神経すぎますね。貴方の恋人は貴方に対する扱いが、ぞんざいすぎませんか?」
首筋を朱に染め、司は泉を睨みつける。
「…き、君には関係ないだろう!」

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