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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
「…君にそんなことを言われる筋合いはない!」
カップを小机に置いて立ち上がる。
自分より頭半分ほど大きな男を見上げ、目を眇める。
「僕と真紀のことは個人的な問題だ!」
泉は冷静に口を開く。
「お言葉ですが、司様は我が縣家が風間様よりお預かりした大切なお客様です。
私は奥様より司様の日本における生活全般に関して見守り、お仕えすることを託されております。
恋人とはいえ、司様の生活を乱すことを見過ごすことは出来ません」
「乱してなんかいない!僕が勝手に真紀に会いに行っているだけだ!」
躊躇いなく泉は静かに尋ねる。
「…失礼ながら、真紀様は司様のお身体だけが目当てなのではありませんか?」
「…なっ…⁉︎」
「司様の最近のご様子を拝見していて、そうとしか思えません。
…真紀様は貴方と身体の関係を結ぶことだけが目的なのではありませんか?
それが証拠に、貴方は真紀様に再会出来たというのに、少しもお幸せそうではない。…むしろ、お寂しそうだ。
そんな関係が良い訳がない」
怒りに身体を震わせた司は拳を握りしめ、泉に怒鳴った。
「うるさいうるさい!黙れ黙れ黙れ‼︎お前なんかに…お前なんかに真紀のなにが分かるんだ‼︎
真紀は…真紀はすごく苦労しているんだ‼︎大変な思いをして大学に通っているんだ!僕は…僕はどんな真紀だって大好きなんだ‼︎
お前なんかが偉そうに説教する権利はない‼︎」
司の薄茶色の瞳にうっすらと浮かぶ透明な涙を見て、泉ははっと胸を突かれた。
「司様…」
泉が何かを言う前に、司は渾身の力を振り絞って泉の身体を突き飛ばす。
「出ていけ!出ていけったら!」
「司様!…私は…!」
「うるさい!お前の話なんか聞きたくない!」
泉を部屋から追い出すと、司はドアに鍵を掛けた。
「司様…私の言葉が過ぎたのでしたらお詫びします。…ですからどうか話を…」
ドア越しに聞こえる泉の言葉に耳を塞ぎ、寝室に駆け込む。
「うるさいうるさい!…もう…放っておいてくれ…!」
泉の言葉は予てから司が薄々気づいていた真紀への違和感や疑問を突いたものだった。
しかし、司はそれを肯定する訳にはいかなかった。
…愛しているから…。
自分には真紀しかいないから…。
そして、真紀にも自分しかいないから…そうに違いないから…。
司はその言葉を胸の内で繰り返しながら、ブランケットを頭から被り強く眼を閉じた。
カップを小机に置いて立ち上がる。
自分より頭半分ほど大きな男を見上げ、目を眇める。
「僕と真紀のことは個人的な問題だ!」
泉は冷静に口を開く。
「お言葉ですが、司様は我が縣家が風間様よりお預かりした大切なお客様です。
私は奥様より司様の日本における生活全般に関して見守り、お仕えすることを託されております。
恋人とはいえ、司様の生活を乱すことを見過ごすことは出来ません」
「乱してなんかいない!僕が勝手に真紀に会いに行っているだけだ!」
躊躇いなく泉は静かに尋ねる。
「…失礼ながら、真紀様は司様のお身体だけが目当てなのではありませんか?」
「…なっ…⁉︎」
「司様の最近のご様子を拝見していて、そうとしか思えません。
…真紀様は貴方と身体の関係を結ぶことだけが目的なのではありませんか?
それが証拠に、貴方は真紀様に再会出来たというのに、少しもお幸せそうではない。…むしろ、お寂しそうだ。
そんな関係が良い訳がない」
怒りに身体を震わせた司は拳を握りしめ、泉に怒鳴った。
「うるさいうるさい!黙れ黙れ黙れ‼︎お前なんかに…お前なんかに真紀のなにが分かるんだ‼︎
真紀は…真紀はすごく苦労しているんだ‼︎大変な思いをして大学に通っているんだ!僕は…僕はどんな真紀だって大好きなんだ‼︎
お前なんかが偉そうに説教する権利はない‼︎」
司の薄茶色の瞳にうっすらと浮かぶ透明な涙を見て、泉ははっと胸を突かれた。
「司様…」
泉が何かを言う前に、司は渾身の力を振り絞って泉の身体を突き飛ばす。
「出ていけ!出ていけったら!」
「司様!…私は…!」
「うるさい!お前の話なんか聞きたくない!」
泉を部屋から追い出すと、司はドアに鍵を掛けた。
「司様…私の言葉が過ぎたのでしたらお詫びします。…ですからどうか話を…」
ドア越しに聞こえる泉の言葉に耳を塞ぎ、寝室に駆け込む。
「うるさいうるさい!…もう…放っておいてくれ…!」
泉の言葉は予てから司が薄々気づいていた真紀への違和感や疑問を突いたものだった。
しかし、司はそれを肯定する訳にはいかなかった。
…愛しているから…。
自分には真紀しかいないから…。
そして、真紀にも自分しかいないから…そうに違いないから…。
司はその言葉を胸の内で繰り返しながら、ブランケットを頭から被り強く眼を閉じた。