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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
翌朝、朝食室にはアイボリーのハイネックのカシミアのセーターに濃紺のパンツ姿の司が優雅に珈琲を口に運びながら、和やかに光と談笑していた。

庭師への指示で朝食室に入るのが遅れた泉は、司の姿を見てほっとした。
泉を認めた光が声を掛ける。
「泉。司さんは今夜は高輪のお家で晩餐を召し上がるそうよ。ですからお帰りは遅くなられるらしいの」
「…そうですか…。畏まりました」
司は泉をちらりと見上げると、あからさまに形式的な微笑みを浮かべた。
「よろしく」

泉が口を開こうとした瞬間、ふっと眼を逸らし、光に笑いかける。
「来週はクリスマスですね、光さん」
「いよいよね。…ねえ、司さんは我が家のイブのクリスマスパーティに参加して下さる?」
司はにっこりと笑う。
「はい。喜んで。どなたが見えるのですか?」
「北白川の綾香さんと梨央さん、大紋様ご一家と…暁さんと月城…月城さんよ」
光が敬意を払って言い直す。
…ああ…とふと司は羨ましそうな眼をした。
「…月城さんは今回初めて正式に暁さんとご一緒に…?」
「ええ、そう。…もう12年お付き合いしていたのだけれど、色々障害が多くてね。…暁さんは貴族だけれど、月城さんは執事…立場は使用人でしょう?…その上、同性同士だから私達以上にご本人達が気を遣われて、公にしてこなかったのよ。…けれどこの夏に漸く月城さんが暁さんにプロポーズなさって、晴れてお二人はパートナーになられたの。
感動したわ!」
光の美しい貌が薔薇色に輝く。
「…そうですか…」
暁のあのきらきらと煌めく眩しいような美貌は月城に愛され、そして愛している自信から来るものだったのだ。
「…まだまだ日本は同性同士の恋愛に理解がないわ。だからせめて私達身内だけでも温かく応援しなくてはね」
光は美しいだけでなく強くて優しい女性なのだと、司は感じ入る。
…礼也さんが夢中になるのも分かるな…。
司は心が温かくなるのと同時に、自分と真紀の関係を顧みて、不安な気持ちになる。
…真紀は…月城さんのように様々な障害を経ても僕を愛し続けてくれるのだろうか…。
いつかプロポーズしてくれるのだろうか…。
…怖くて考えたことのない疑問だった。

司は小さく息を吐くと、華やかな美貌に笑みを浮かべ
「…お二人にとって素敵なイブになりますように、祈っております」
そう告げると、冷めた珈琲を一口飲んだ。




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