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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
司は大学の担当教授の部屋に挨拶にゆき、今まで登校しなかったことを詫びた。
担当教授の林は人の良い人物だった。
「…まだ日本になかなかお慣れにはならないでしょうが、学校を社会勉強の場所だと思って気楽においでなさい。
ゼミの仲間たちも貴方がいらっしゃるのを楽しみにしているのですよ」
そう温和な笑顔で微笑みながら、熱いダージリンを勧めてくれた。
司はこんな良い教授をおざなりにしていたことを初めて申し訳なく思った。

来週からゼミに参加することを約束し、大学を出る。
高輪の祖父母宅を訪ねると、祖父母は涙ながらに司を歓迎した。

「司ちゃん!まあまあ、大きくなって…。…それになんて綺麗なお貌でしょう…。亡くなったお父様に似て来たわね…」
写真でした見たことがない祖母は小さく、頼りなげだった。
司を抱きしめて離さない。
「お祖母様、伺うのが遅くなってごめんなさい…」
年老いた祖母を寂しがらせていたかと思うと心が痛んだ。
傍らでその様子を見守っていた祖父が涙を拭う。
「お祖母様はずっとお前に逢いたがっていたのだよ…。よく来てくれた…」
一代でホテルを起業し、成功させたという祖父はまだまだ威厳に満ちた風格をしていたが、やはり年相応の老いが見られた。
「…お祖父様…」
司は幼かったから両親が駆け落ちし、フランスに渡った詳しい経緯は知らないしあまり覚えてもいない。
司と引き離し未亡人だった母を他家に嫁がせようとした事に怒った忍が司を取り返し、暁の協力を得て三人で渡仏したのだが、その当時から祖父母は司を溺愛していたらしい。
司も祖父母には良い記憶しかなかった。

フランスに渡ったばかりの頃は忍も祖父母を許してはいなかったが、経年する内に司に逢いたがる彼らに不憫な気持ちが湧いて来たのだろう。
今回の帰国では
「高輪のお祖父様達に逢いに行ってやってくれ」
とわざわざ頼んだくらいだった。
母の百合子を誰よりも大切にしている忍は帰国する気はないようだが、それでもだいぶ両親に対しての蟠りは解けて来ているようだ。
百合子も、自分のせいで祖父母に寂しい思いをさせてしまっていることに胸を痛めていた。
「お祖父様、お祖母様に優しくして差し上げてね」
そう言われ土産まで託されていたのに…。
真紀とのことで頭が一杯で、年老いた祖父母を思い遣れなかった自分自身を司は恥ずかしく思った。



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