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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
泉は雨を吸い重く湿った司の上質なカシミアのコートの始末をしながら、思いを巡らせた。
…司様はどちらに行かれていたのか…。
高輪の風間家ではなかったのだろうか…。
泉は湧き上がる疑問を一先ず置いて、温かい飲み物を作るべく、部屋を出ると階下のキッチンへと急いだ。

…熱々のチャイを盆に載せ、部屋に戻ると、司がちょうど白いバスローブ姿で髪を拭きながら居間に入ってくるところだった。
無造作に着たバスローブの襟元から覗く透き通るような白い肌に一瞬どきりとし、さりげなく視線を外す。
のろのろとした動作でソファに座る司に、温かいチャイを差し出す。

ゆっくりと司が泉を見上げ、小さく
「…ありがとう…」
と呟き、カップを受け取る。
…まるで迷子のような表情だ。
一口飲み、ぽつりと
「…美味しい…」
と漏らした。

飲み物を飲んでくれたことにほっとした泉は、司の背後に回る。
艶やかな明るい髪から透明な水滴が滴り落ちているのを見つけ、司の手からタオルを受け取る。
「まだ濡れていますよ。…お拭きします」
司はもう断らなかった。
黙って泉に身を任せ、チャイをもう一口飲んだ。

優しく労わるように司の髪を拭く。
ほっそりとした白い首筋に朱色の跡がないことになぜか、心よりほっとした。

暫くしてぽつりと司が尋ねた。
「…ねえ。…花嫁修業って、なに?」
意外な質問に泉は途惑う。
「…花嫁修業…ですか。…そうですね。結婚準備をされる未婚の若い女性が、家事全般の勉強や訓練をすること…でしょうか…」
「…結婚…」
独り言のように司が呟く。
「…あの…」
泉が尋ねようとすると、司がもう一度口を開いた。
「…あのさ。…日本では独身の男性の家に女性が上がって家事をしたり…て、よくあること?…例えば友達とかなら…」
益々不可思議な質問をする司に、眉を顰めながらも答える。
「…いいえ。日本では未婚の女性が男性の家に上がることはまずあり得ません。…その方が婚約者など、結婚を前提にしている方でない限りは…」
司の華奢な肩がびくりと震えた。
「…婚…約者…」
震えるか細い声…。
泉は髪を拭く手を止め、尋ねる。
「…どうされたのですか?一体なにがあったのですか?」
雨の中、ずぶ濡れになりながら帰宅するなど尋常ではない。

しかし司は俯いたまま小さく答えた。
「…なんでもない…ありがとう、泉。
もう下がっでいい…」

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