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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
「泉!泉!みて!すみれがほしかったお人形よ!サンタさんが届けてくれたのよ!」
菫の嬉しそうな甲高い声が玄関ホールに響く。
クリスマスイブの朝、縣家にはサンタクロースから大きな樅木のクリスマスツリーの根元に子ども達へのクリスマスプレゼントが届けられているのだ。
泉は興奮したように高価そうなビスクドールの人形を抱きしめる菫に微笑みかける。
「良かったですね。菫様。とても素敵なお人形です」
傍らにはナイトウェアの上にガウンを羽織った礼也と光が寄り添いながら、菫の可愛らしい様に目を細める。
光が礼也にそっと囁く。
「…でも普通はサンタクロースはイブの翌日に来るものではないの?」
礼也は可笑しそうに片目をつぶって見せる。
「…西洋の行事に疎い祖父がうっかりイブの朝にプレゼントを置くように言いつけてから、我が家ではずっと一日早いクリスマスなのさ」
光が笑う。
「正に慌てん坊のサンタクロースね」
礼也は愛しげに妻に愛情のこもったキスを贈った。
「薫様へのプレゼントは何でしたか?」
泉は、ツリーの根元に座り込み大きな箱の綺麗な包み紙を大胆に破る薫に尋ねた。
「…望遠鏡だ‼︎僕がずっと欲しがっていたやつだ‼︎」
薫は目を輝かせ、礼也を振り返る。
そして礼也と光の元に駆け寄ると、小声で囁いた。
「お父様、ありがとう…!」
14歳の薫はさすがにサンタクロースの存在を信じていない。
けれど菫の夢を壊してはいけないので、そっと礼を言ったのだ。
礼也はにこにこ笑うと、薫をその逞しい腕で抱き上げた。
「…どういたしまして。風邪を引かないように、覗くんだよ」
優しい父親に薫はキスを贈る。
隣の光が美しい眉を上げる。
「…お母様にはキスしてくれないの?」
薫はにやりと笑うと、恥ずかしそうに…けれどきちんと光の頬にキスをした。
「…メリークリスマス、薫…」
光が愛情深くキスを返した。
その様子を見つけた菫がぱたぱたと駆け寄る。
「すみれも!すみれもキスする!」
礼也は目尻を下げて、菫を抱き留めた。
司は大階段に腰掛けながら、賑やかで愛情溢れたその光景を微笑みながら眺めている。
…だがその表情は寂しげだ。
「司さんもこちらにいらして。…ご一緒に珈琲を頂きましょう」
光の誘いに如才なく頷く。
「…ありがとうございます」
泉の気遣わしげな眼差しを避けるように、司は傍らを通り過ぎて行った。
菫の嬉しそうな甲高い声が玄関ホールに響く。
クリスマスイブの朝、縣家にはサンタクロースから大きな樅木のクリスマスツリーの根元に子ども達へのクリスマスプレゼントが届けられているのだ。
泉は興奮したように高価そうなビスクドールの人形を抱きしめる菫に微笑みかける。
「良かったですね。菫様。とても素敵なお人形です」
傍らにはナイトウェアの上にガウンを羽織った礼也と光が寄り添いながら、菫の可愛らしい様に目を細める。
光が礼也にそっと囁く。
「…でも普通はサンタクロースはイブの翌日に来るものではないの?」
礼也は可笑しそうに片目をつぶって見せる。
「…西洋の行事に疎い祖父がうっかりイブの朝にプレゼントを置くように言いつけてから、我が家ではずっと一日早いクリスマスなのさ」
光が笑う。
「正に慌てん坊のサンタクロースね」
礼也は愛しげに妻に愛情のこもったキスを贈った。
「薫様へのプレゼントは何でしたか?」
泉は、ツリーの根元に座り込み大きな箱の綺麗な包み紙を大胆に破る薫に尋ねた。
「…望遠鏡だ‼︎僕がずっと欲しがっていたやつだ‼︎」
薫は目を輝かせ、礼也を振り返る。
そして礼也と光の元に駆け寄ると、小声で囁いた。
「お父様、ありがとう…!」
14歳の薫はさすがにサンタクロースの存在を信じていない。
けれど菫の夢を壊してはいけないので、そっと礼を言ったのだ。
礼也はにこにこ笑うと、薫をその逞しい腕で抱き上げた。
「…どういたしまして。風邪を引かないように、覗くんだよ」
優しい父親に薫はキスを贈る。
隣の光が美しい眉を上げる。
「…お母様にはキスしてくれないの?」
薫はにやりと笑うと、恥ずかしそうに…けれどきちんと光の頬にキスをした。
「…メリークリスマス、薫…」
光が愛情深くキスを返した。
その様子を見つけた菫がぱたぱたと駆け寄る。
「すみれも!すみれもキスする!」
礼也は目尻を下げて、菫を抱き留めた。
司は大階段に腰掛けながら、賑やかで愛情溢れたその光景を微笑みながら眺めている。
…だがその表情は寂しげだ。
「司さんもこちらにいらして。…ご一緒に珈琲を頂きましょう」
光の誘いに如才なく頷く。
「…ありがとうございます」
泉の気遣わしげな眼差しを避けるように、司は傍らを通り過ぎて行った。