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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
司は暁と月城が幸せそうに見つめ合い、微笑み合う様をじっと見つめていた。
今宵の司は極上の黒い燕尾服に身を包み、明るい色の髪を綺麗に撫でつけ、まるで外国の貴公子のように華やかな佇まいである。
しかし、漂う雰囲気にいつもの煌めくような生気はなかった。
…数日前からずっとこんな調子だ…。
泉は司の様子が気になって仕方がなかった。
ずぶ濡れで帰ってきたあの日…。
司は一言も言わなかったが、恐らくは真紀の下宿に行ったのだろう。
そして女の存在を知ったのではないだろうか。
そうでないとここまで彼が意気消沈するはずが無いからだ。
…最初からあの医学生は明らかに司様の帰国を快く思ってはいなかったようだ。
だからあんな風に冷たい態度を取っていたのだ。
だが…司様は彼をまだ信じていて、愛しているのだろう…。
遣る瀬ない思いが泉の胸の中を渦巻く。
その想いを振り払うように泉は柔かな笑みを浮かべ、司に歩み寄り、銀の盆に載せたカクテルを差し出す。
「司様、どうぞ」
司は泉を見上げ、素直にグラスを受け取る。
「…ありがとう…」
…そして、その薄茶色の瞳に憂いを秘めながら呟いた。
「暁さんは幸せだね。…彼一筋のひとに巡り会えて…。
君の兄さんは誠実そうだ」
「…司様…」
泉が口を開きかけた時、執事の生田がダイニングルームの扉の前で恭しく一礼をした。
「皆様、晩餐の用意が整いました。どうぞこちらへ…」
下僕がゆっくりと扉を開く。
北白川伯爵令嬢達が光と共にダイニングルームに入る。
続いて大紋一家が入り、暁と月城が後に続く。
礼也が司に声を掛ける。
「司くん。今夜は私の隣でいいかな?…パリのクリスマスの話を、光さんに聞かせてあげてくれないか。光さんはパリが恋しくてたまらないらしい」
礼也の温かな笑みに応えるように、司も微笑み返す。
「はい。もちろんです」
司は泉を一瞬だけ見つめ…やがて視線を移すとしなやかに傍らを通り過ぎ、礼也と共にダイニングルームに入って行ったのだった。
今宵の司は極上の黒い燕尾服に身を包み、明るい色の髪を綺麗に撫でつけ、まるで外国の貴公子のように華やかな佇まいである。
しかし、漂う雰囲気にいつもの煌めくような生気はなかった。
…数日前からずっとこんな調子だ…。
泉は司の様子が気になって仕方がなかった。
ずぶ濡れで帰ってきたあの日…。
司は一言も言わなかったが、恐らくは真紀の下宿に行ったのだろう。
そして女の存在を知ったのではないだろうか。
そうでないとここまで彼が意気消沈するはずが無いからだ。
…最初からあの医学生は明らかに司様の帰国を快く思ってはいなかったようだ。
だからあんな風に冷たい態度を取っていたのだ。
だが…司様は彼をまだ信じていて、愛しているのだろう…。
遣る瀬ない思いが泉の胸の中を渦巻く。
その想いを振り払うように泉は柔かな笑みを浮かべ、司に歩み寄り、銀の盆に載せたカクテルを差し出す。
「司様、どうぞ」
司は泉を見上げ、素直にグラスを受け取る。
「…ありがとう…」
…そして、その薄茶色の瞳に憂いを秘めながら呟いた。
「暁さんは幸せだね。…彼一筋のひとに巡り会えて…。
君の兄さんは誠実そうだ」
「…司様…」
泉が口を開きかけた時、執事の生田がダイニングルームの扉の前で恭しく一礼をした。
「皆様、晩餐の用意が整いました。どうぞこちらへ…」
下僕がゆっくりと扉を開く。
北白川伯爵令嬢達が光と共にダイニングルームに入る。
続いて大紋一家が入り、暁と月城が後に続く。
礼也が司に声を掛ける。
「司くん。今夜は私の隣でいいかな?…パリのクリスマスの話を、光さんに聞かせてあげてくれないか。光さんはパリが恋しくてたまらないらしい」
礼也の温かな笑みに応えるように、司も微笑み返す。
「はい。もちろんです」
司は泉を一瞬だけ見つめ…やがて視線を移すとしなやかに傍らを通り過ぎ、礼也と共にダイニングルームに入って行ったのだった。