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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
泉は司を庇うように立ちはだかり、真紀と向かい合う。
「司様は嫌がっておられます。手をお離しください」
「君は誰だ?」
怪訝そうな貌で真紀が尋ねる。
「私は縣家の執事です。司様は旦那様が風間様よりお預かりした大切なお客様です。
私には司様をお守りする責務があります」
真紀が鬱陶しそうに、泉を押しのける。
「ああそう。だけど、これは俺と司の個人的な問題だからね。執事の君が口を挟むことじゃないんだよ。そこを退いてもらえないか」
泉は真紀の手を払いのけ、再び司を庇うように立ちはだかった。
「司様は嫌だと仰っています。
…それに…先ほど貴方のお話を聞かせていただきました。
…司様を愛人扱いなさるなど、とても容認できません。
これは私の個人的な感情ですが、貴方のような方に司様をお任せするわけにはまいりません」
泉の背後で司が息を飲む。
「…泉…」
泉が司を振り返る。
凛々しい瞳の中に、司を労わるような光とそして熱い情動が垣間見られた。
「…私が司様をお守りいたします。貴方を危険な目になど合わせません。貴方は縣家にとっても私にとっても大切な方です。貴方を不幸にするような方に、お渡しする訳にはまいりません」
暫く泉を睨みつけていた真紀だが、ふっと唇を歪めて笑い出すと、露悪的な口調で語り始めた。
「…さすが美人のお坊ちゃまはいいな。窮地に陥ると間髪を入れずに色男の騎士が現れる。…まるでお伽話だ!」
「…真紀…、僕は君が…」
司の涙ぐんだ声を遮るように背を向ける。
「…綺麗で温室育ちのお前にはお伽話がお似合いだ。
せいぜいそいつにお守りして貰うんだな」
冷たく言い放ち、玄関に向かおうとする真紀に司が叫ぶ。
「待って、真紀!僕は君を愛して…」
真紀が鋭く叫び、司を睨みつける。
「お前とはこれっきりだ。二度とここには来るな!」
そう言い捨てるとぴしゃりと玄関の扉を閉め、司の前から姿を消したのだった。
司が駆け寄り白い拳で扉を叩く。
「待って、真紀!真紀!」
後ろから泉が司を抱きかかえるように引き離す。
「司様、帰りましょう」
「嫌だ、嫌だ!真紀!真紀!」
「司様!」
泉は力づくで扉から引き離し、自分の胸に抱き込む。
暴れる司を強く抱きしめる。
「真紀!真紀!…まさ…き…」
子どものように泣き喚く司を、泉は無言で抱きしめ続けた。
…まるで、大切な唯一の宝物を守り抜くように…。
「司様は嫌がっておられます。手をお離しください」
「君は誰だ?」
怪訝そうな貌で真紀が尋ねる。
「私は縣家の執事です。司様は旦那様が風間様よりお預かりした大切なお客様です。
私には司様をお守りする責務があります」
真紀が鬱陶しそうに、泉を押しのける。
「ああそう。だけど、これは俺と司の個人的な問題だからね。執事の君が口を挟むことじゃないんだよ。そこを退いてもらえないか」
泉は真紀の手を払いのけ、再び司を庇うように立ちはだかった。
「司様は嫌だと仰っています。
…それに…先ほど貴方のお話を聞かせていただきました。
…司様を愛人扱いなさるなど、とても容認できません。
これは私の個人的な感情ですが、貴方のような方に司様をお任せするわけにはまいりません」
泉の背後で司が息を飲む。
「…泉…」
泉が司を振り返る。
凛々しい瞳の中に、司を労わるような光とそして熱い情動が垣間見られた。
「…私が司様をお守りいたします。貴方を危険な目になど合わせません。貴方は縣家にとっても私にとっても大切な方です。貴方を不幸にするような方に、お渡しする訳にはまいりません」
暫く泉を睨みつけていた真紀だが、ふっと唇を歪めて笑い出すと、露悪的な口調で語り始めた。
「…さすが美人のお坊ちゃまはいいな。窮地に陥ると間髪を入れずに色男の騎士が現れる。…まるでお伽話だ!」
「…真紀…、僕は君が…」
司の涙ぐんだ声を遮るように背を向ける。
「…綺麗で温室育ちのお前にはお伽話がお似合いだ。
せいぜいそいつにお守りして貰うんだな」
冷たく言い放ち、玄関に向かおうとする真紀に司が叫ぶ。
「待って、真紀!僕は君を愛して…」
真紀が鋭く叫び、司を睨みつける。
「お前とはこれっきりだ。二度とここには来るな!」
そう言い捨てるとぴしゃりと玄関の扉を閉め、司の前から姿を消したのだった。
司が駆け寄り白い拳で扉を叩く。
「待って、真紀!真紀!」
後ろから泉が司を抱きかかえるように引き離す。
「司様、帰りましょう」
「嫌だ、嫌だ!真紀!真紀!」
「司様!」
泉は力づくで扉から引き離し、自分の胸に抱き込む。
暴れる司を強く抱きしめる。
「真紀!真紀!…まさ…き…」
子どものように泣き喚く司を、泉は無言で抱きしめ続けた。
…まるで、大切な唯一の宝物を守り抜くように…。