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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
縣家の舞踏室では、弦楽四重奏楽団が優雅にヨハン・シュトラウスを奏で始めた。
ダンスが大好きな光は屋敷で開くパーティの最後は必ずワルツを踊ることに決めているのだ。

葡萄酒色のストラップのみのイブニングドレス姿の光はその透き通るように白い手を礼也に差し伸べる。
「踊ってくださる?私の愛しい旦那様」
礼也は美しい妻に目を細める。
その芸術品のように繊細な手を取り、恭しくくちづける。
「喜んで。私の麗しの女王様」

礼也と光が踊り始めたのを暁は微笑みながら眺める。
光が踊りながら暁に温かなウィンクを投げる。
…義姉さん。
義姉さんのお陰で僕は今、こんなに幸せなイブの夜を過ごせている。

暁は光に心から感謝の眼差しを送る。
礼也はもちろんだが、今や光は自分にとってなくてはならない大切な家族だとしみじみ痛感する。
傍らに立つ月城に囁く。
「…君とこの家でワルツを踊れるなんて夢みたいだ…」
白磁のような白い頬を朱に染めて、月城を見上げる。
「私もです。暁様」
月城は輝くように美しい伴侶を見下ろし、手を差し伸べる。
「…踊っていただけますか?暁…」
恥じらうようにその手を握りしめる。
「…もちろんだ。森…」
美しいワルツの調べに身を委ね、二人は優雅に踊り出す。

踊る暁を感慨深く見つめるのは大紋だ。
…まだ少年の彼と、温室でワルツを踊ったことがあった…。
あれは…
もう20年以上前の話だ…。
抱きしめて愛を告白した。
…あの夜のことは今も鮮明に胸に蘇る。

…もう胸が痛まないと言ったら嘘になるが…。
けれど、暁への思いは昔とは違う。
時折切なく胸は痛むが、それは甘く懐かしいものに変わりつつある…。

暁への思いが美しい想い出に変わりつつあることを噛み締めながら、大紋はにっこりと妻に笑いかける。
「…踊っていただけますか?奥様…」
絢子は泣き出しそうな眼をして、頷いた。
絢子の華奢な手を握りしめ、大紋は巧みにリードする。

北白川伯爵令嬢の梨央と綾香は舞踏室の中、優雅に華やかに踊る人々を愛しげに眺める。
綾香が梨央の手を握りしめ、引き寄せる。
「私達も負けてはいられないわね。梨央…誰よりも貴女を愛しているわ」
梨央は美しい瞳を煌めかせながら微笑んだ。
「私もですわ…愛しています。お姉様。」
裾の長いドレスの二人がワルツの調べに溶け込むようにふわりと優美に踊り始める。



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