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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第8章 真夜中のお茶をご一緒に
「…ここは…?」
司は朱色の大鳥居の前で思わず声を上げた。

「神社です。…クリスチャンの方の教会のようなところでしょうか」
泉が司を連れて来たのは、縣邸から歩いて10分ほどのなだらかな坂道を上がった東町にある氷川神社であった。
規模から言うとこじんまりした神社なのだろうが、元日のこと近所の人々が晴れ着を着込み、初詣に次々に訪れておりなかなかの賑わいであった。

参道には出店なども出て、賑やかさに花を添えている。
「日本人は三が日に神社に初詣をする習慣があるのです。
神様にお参りして、家内安全や商売繁盛を願うのですよ」

珍しそうにきょろきょろと辺りを見回す司に尋ねる。
「神社は初めてですか?」
「うん。初めて。…ここが神社かあ…!」
幼稚園に上がる前にフランスに渡った司には、日本の記憶はほとんどない。
見るもの全てが珍しいのだ。
薄茶色の瞳をきらきら輝かせて参道を歩く司に眼を細める。
「フランスでは新年はどう過ごされるのですか?」
「う〜ん…日本みたいに決まった儀式はないなあ。
…でもうちは、ニューイヤーだけはお母様のお店もお休みで、お父様もそれに合わせてお休みを取ってくれたから家族で過ごせて嬉しかったな。
…ノートルダム寺院に新年のミサに行くんだ。それから…お母様がガレット・デ・ロワを焼いてくれて…」
「それは何ですか?」
「アーモンドやクリームのパイだよ。その中に陶器で出来たフェーブという小さな人形が入っているんだ。切り分けて食べるんだけどその人形に当たった人はその日、王様になれるんだ。すごくわくわくして楽しいんだよ。瑠璃子が生まれてからは、人形が瑠璃子に当たるようにさりげなく選んでやったりしてね」
豊かで幸せそうな司の思い出に泉は微笑む。
「お優しいお兄様ですね」
司は綺麗な笑顔を向ける。
「瑠璃子は本当に美人で可愛いんだ。でも大人しくて引っ込み思案だから、つい過保護になっちゃってね。…瑠璃子にも日本の神社を見せてあげたいなあ…」
「縣の旦那様も光様も、司様のお妹様ならいつでも大歓迎されますよ。ぜひご招待なさいませ」
「そうだね。瑠璃子さえ良ければそうしたいな」
他愛のない話をする間も二人の手は繋がれたままだ。
泉はそっと司の貌を見下ろし、愛おしげに見つめた。



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