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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第8章 真夜中のお茶をご一緒に
ガウンを羽織り直し、ドアを開ける。
灯りが消えた暗い廊下に、心許ないような表情で司が佇んでいた。
「司様…。どうされたのですか?…ああ、まず中にお入り下さい。お身体が冷えてしまいます」
自分が脱いだガウンを司の華奢な肩に羽織らせる。
抱きかかえたまま、まだ少し暖気が残る暖炉の前に連れて行く。
司の細い指先がしがみつくように泉の腕を掴んだ。
「…泉…」
「はい?」
「…一人で寝ていたら…すごく寂しくなって…泉のことを思い出した…」
泉はふっと笑い、優しく司の頭を抱き寄せた。
「…私もですよ。…司様にお会いしたいな…と思っていました」
「本当?」
稚い子どものように無垢な瞳が泉を見上げる。
「…ええ」
「…じゃあ…今夜はここで一緒に寝てもいい?」
「…司様…」
必死な眼差しが泉の次の言葉を待つ。
泉は苦笑いして、艶やかな司の頬を撫でる。
「…司様。私は貴方と同衾して何もしないでいられるほどの忍耐力はありません…。まだまだ人間が出来ていないのです。申し訳ありませんが…」
司の手が強く泉を引き寄せる。
「いいんだ。…泉…」
「…え?」
透き通るような白い頬がうっすらと桜色に染まる。
「…君と…セックスしたい」
外国育ちの司は言葉を濁さずにはっきりと口に出す。
泉の方が狼狽えた。
「司様!」
「…それは…本気ですか?」
「うん…」
「…けれど…司様は恋をするのが怖いと仰いました。
まだ真紀様との恋から、立ち直られていないのではありませんか?…そんな貴方を…欲望に任せて私が抱くことが許されるでしょうか?」
まだ迷いのある司を、無理に抱くことはしたくない。
司は首を振る。
そして泉の胸に抱きついた。
「…怖いけれど…泉と愛し合いたい…。泉をもっと知りたい。…泉にも…僕のことを知ってほしい…そうしたら、きっともう怖くなくなる。…もっともっと泉が好きになる…だから…」
司の真摯な言葉を受け、泉は堪らずに司の頬を両手で挟み、狂おしく唇を奪う。
「…あっ…ん…!」
熱い吐息をも奪い唇を押し開き、舌を絡める。
「…は…ああっ…ん…」
甘い声を上げる司の唇を名残惜しげに離す。
「…そんなことを仰って…。どうなっても知りませんよ…!」
涙ぐみ泉を見上げる司を横抱きに抱え、泉はベッドへと歩き出した。
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