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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
…泣きじゃくる薫が事の顛末を最後まで語り終えたのは小一時間も経ったころであった。
薫はうさぎのように眼を泣き腫らし、しゃくりあげながら暁人に訴えた。
「ひ、酷いと思わないか?暁人。泉と司さんが…セッ…セックスするなんて…。
…つ、司さんが泉を誘惑したんだ…絶対そうだよ!」
暁人は薫の洟を手巾でかんでやりながら、優しく諭した。
「決めつけるなよ。…司さんはそんな人じゃないだろう」
「わかるもんか!そんなの!」
「…薫、薫には可哀想だけど…僕は泉は薫のことを…恋愛対象として見てはいないとは思っていたよ」
薫は凄まじい目付きで睨みつけた。
「暁人!なんでそんなこと言うんだよ!」
涙を拭いてやり、乱れた髪を直してやる。
優しい兄のように世話を焼いてやりながら、それでも薫の心に届くようにしっかりとした声で語り出した。
「…泉が薫を見る眼だよ。…薫のことをとても大切に可愛く思っているのはよく分かった。…でもそこに熱い恋情の想いは読み取れなかったからさ」
薫ははっと大きな潤んだ瞳を見開き、暁人から貌を背けた。
「…そんな…嘘だ…」
打って変わった弱々しい声に、暁人の胸はちくりと痛む。
嫉妬からではない。
薫の傷ついた心が手に取るように解ったからだ。
暁人は背中からその震える華奢な身体を強く抱きしめた。
そして心を鬼にして口を開く。
「…こんなこと、言いたくないけれど…泉は薫に恋してはいないよ。性の対象としても見ていないんだ。
…だから…司さんとそういう関係になったんだろう。
泉は司さんを選んだんだよ。薫でなく…司さんを…」
「…嘘だ…嘘だ…嘘…!」
聞き分けのない子どものようにもがく薫の身体を更に強く…万感の想いを込めて抱きすくめる。
薄桃色に透き通る耳朶に囁く。
「薫を愛しているのは僕だ。…僕は誰よりも薫を愛している。…薫、僕にしなよ。…大切にするよ。こんな風に薫を泣かせたり絶対にしない。…薫…僕を愛して…お願いだから…」
薫は暁人の腕は解かぬまま、頭を振る。
嗚咽しながら蚊の鳴くような声で呟いた。
「…暁人のバカ…。なんで今、そんな話をするんだよ…バカ…バカ…」
薫はうさぎのように眼を泣き腫らし、しゃくりあげながら暁人に訴えた。
「ひ、酷いと思わないか?暁人。泉と司さんが…セッ…セックスするなんて…。
…つ、司さんが泉を誘惑したんだ…絶対そうだよ!」
暁人は薫の洟を手巾でかんでやりながら、優しく諭した。
「決めつけるなよ。…司さんはそんな人じゃないだろう」
「わかるもんか!そんなの!」
「…薫、薫には可哀想だけど…僕は泉は薫のことを…恋愛対象として見てはいないとは思っていたよ」
薫は凄まじい目付きで睨みつけた。
「暁人!なんでそんなこと言うんだよ!」
涙を拭いてやり、乱れた髪を直してやる。
優しい兄のように世話を焼いてやりながら、それでも薫の心に届くようにしっかりとした声で語り出した。
「…泉が薫を見る眼だよ。…薫のことをとても大切に可愛く思っているのはよく分かった。…でもそこに熱い恋情の想いは読み取れなかったからさ」
薫ははっと大きな潤んだ瞳を見開き、暁人から貌を背けた。
「…そんな…嘘だ…」
打って変わった弱々しい声に、暁人の胸はちくりと痛む。
嫉妬からではない。
薫の傷ついた心が手に取るように解ったからだ。
暁人は背中からその震える華奢な身体を強く抱きしめた。
そして心を鬼にして口を開く。
「…こんなこと、言いたくないけれど…泉は薫に恋してはいないよ。性の対象としても見ていないんだ。
…だから…司さんとそういう関係になったんだろう。
泉は司さんを選んだんだよ。薫でなく…司さんを…」
「…嘘だ…嘘だ…嘘…!」
聞き分けのない子どものようにもがく薫の身体を更に強く…万感の想いを込めて抱きすくめる。
薄桃色に透き通る耳朶に囁く。
「薫を愛しているのは僕だ。…僕は誰よりも薫を愛している。…薫、僕にしなよ。…大切にするよ。こんな風に薫を泣かせたり絶対にしない。…薫…僕を愛して…お願いだから…」
薫は暁人の腕は解かぬまま、頭を振る。
嗚咽しながら蚊の鳴くような声で呟いた。
「…暁人のバカ…。なんで今、そんな話をするんだよ…バカ…バカ…」