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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
その日の晩餐は大紋の計らいで、暁人の部屋に食事が運ばれ、薫と二人きりで摂った。
薫は言葉少なだったが、出された心尽くしの正月料理をゆっくりと口にし始めた。
暁人はほっとした。

薫はお雑煮を食べながらぼそりと呟いた。
「…暁人のところのお雑煮は焼き餅なんだね。…小松菜と…鶏肉と椎茸が入っているんだ」
「あ、うん。…お父様もお母様も東京出身だからね。薫のところは?九州風だっけ?」
「…うん。曾祖父様が福岡出身だから鰤とかつお菜っていう野菜が入ってる。…僕は魚が苦手だからいつも残してお母様に叱られる」
薫が少しずついつものように話し出したのが嬉しくて、暁人は薫の心を浮きたたせるように殊更陽気に笑った。
「薫は苦手なものが多いもんな。合宿で苦労するよ?」
「…お前は好き嫌いがないもんな」
箸を止めて向かいに座る暁人を見つめた。

普段見慣れない和服姿の暁人は、とても大人びて見えた。
上背があり肩幅は青年のようにがっしりとしている暁人は、和服がよく似合う。
暁人の家では絢子が着物好きなこともあり、暁人もよく和服を着るらしい。
だから彼は和服を着慣れていて、その様子はとても洗練されている。

…父親譲りの端正で精悍な貌立ち、すらりとした長身、落ち着いた物腰…。
暁人は近隣の女学校の生徒達の憧れの的だ。
容姿だけでなく知的で優しく頼もしい性格なので、話しやすいと信頼されているのだ。
姉妹校との舞踏会では暁人目当ての女学生が群れをなすし、馬術大会では暁人が競技すると見学に来た女学生らから歓声が上がる。

…暁人はもてるから、僕なんかに拘らなくていいのにな…。
先ほどの暁人の抱擁を思い出す。
「…愛してる、薫…」
真摯な熱い声が蘇る。

…ふと貌を上げた暁人と眼が合い、薫は思わず貌を赤らめ、俯いた。
「どうしたの?薫」
「な、なんでもない!…ねえ、その伊勢海老取ってよ」
わざとぞんざいに皿を突き出すと、暁人はにこにこしながらよそってくれた。
「このマリネも食べてみなよ。お母様のお手製なんだ。美味しいよ」
「…う、うん…」
…暁人はいつも優しい…。
そして今夜はそれが一層身に染みて感じた薫であった。

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